大型商業施設や大手メーカーの工場などが導入
一方、オフィスビルや商業ビルの専有部分、学校、病院、工場といったプライベート空間についても着々と「iPNT-KTM」を提供している。サービス開始からもうすぐ2年になろうとしているが、さまざまな業界から関心が集まっているようだ。
「22年9、10月の国内最大級のテクノロジー見本市であるCEATEC(シーテック)の他、測位関連、医療関連、防災関連などの見本市に積極的に出展した効果もあって、問い合わせが急増しています。展示会後2カ月ぐらいの間に600件以上もの問い合わせがありました」(野田部長)
導入事例も着実に増えており、大型案件も多い。23年4月には、三井不動産が「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」など、全国約60の大型商業施設で利用できる「iPNT-KTM」を活用したスマートフォンの商業アプリ「三井ショッピングパークアプリ」が三井不動産からリリースされた。
「iPNT-KTM」による屋内位置情報サービスと、位置情報を表示する地図サービスを利用したもので、地図デザインには、最新のテクノロジーを使った芸術的なデジタルコンテンツづくりで定評があるチームラボも参加している。
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「屋内位置情報サービスを使えば、商業施設内のどこが混雑していて、どの店ならすぐに入れるのかといったことがひと目で分かり、来店者の満足度を高めることができます。この他にも、業種ごと、施設ごとにさまざまな用途が考えられます」(野田部長)
例えば製造業なら、「工場内で人あるいはフォークリフトがどのように動いているのか?」といったことが屋内位置情報を基に分析することもできる。動く距離が長ければ、機械や加工するモノが効率よく配置されていない可能性もある。
ある大手メーカーは、国内にある全ての工場で「iPNT-KTM」を導入することを決定した。人の配置や動きを効率化するだけでなく、工場内にある台車やフォークリフト、外注業者が構内に乗り入れたトラックなどの位置を把握するためだ。「搬入や積み出しのトラックが到着したら、すぐに台車やフォークリフトを集められるようにするのが目的です」と野田部長は説明する。工場内の人の動きについては、スマートフォンを携帯しなくても位置が把握できるように、Wi-FiやBluetoothが受信できる小型端末(ロケーター)も提供している。
野田部長は「iPNT-KTM」の今後の展開について、「同業他社が提供するサービスとも親和性があり、他社の測位技術とiPNT-KTMの屋内マップの連携なども容易であることから、iPNT-KTMが屋内位置情報サービスのデファクトスタンダードとなり、さらにスマートフォンの標準機能の一つとして搭載されるような世界を目指しています。屋外と屋内の位置情報サービスがシームレスにつながり、ユーザーがどこにいても当たり前のように位置情報を確認できるようになれば、社会インフラとしての価値が定着するはずです」と語る。それは、川崎重工業が社会にもたらす新たな価値となるはずだ。