「多くの企業にとって、予算の問題が社員向けサービスの大きなボトルネックとなっていることを踏まえ、コストをかけずに利用できるサービスを提供したいと考えました」と桑原課長は説明する。

しかも、「NOMURA WORK-LIFE PLUS」を利用できるのは、野村不動産が運営するビルで働く社員だけではない。入居する企業の支社や工場といった国内拠点で働く社員もサービスを利用できるようにしているのが、非常にユニークな点だ(下図参照)。

「福利厚生にかかわるサービスも含まれることから、不公平感が出ないように、当社のオフィスビルで働いておられる方だけではなく、他のオフィスや工場などで働いている全ての従業員の方がご利用いただけるようにしました」(桑原課長)

また、「NOMURA WORK-LIFE PLUS」は、社員がパソコンやスマートフォンを使ってサービスを選び、申し込みや利用ができるプラットフォームなので、人事総務担当者の手を煩わせることはほとんどない。「ノウハウが不足している」という課題も解決できるわけだ。

そもそも、なぜ野村不動産はこうしたサービスプラットフォームを提供することにしたのか。そこには、「オフィスというハードだけでなく、入居される企業や、そこで働く社員の方々の課題を解決するためのソフトも提供していきたいという強い思いがありました」と桑原課長は明かす。

野村不動産は、分譲マンションブランドの「PROUD」(プラウド)などで知られるが、オフィスビルの開発・運営についても豊富な実績を持つ。首都圏や関西圏で72棟を展開する中規模ハイグレードオフィスの「PMO」(ピーエムオー)や、19年から提供を開始しているサービス付き小規模オフィス「H1O」(エイチワンオー)などが代表例だ。

25年に完成予定の「芝浦プロジェクト」(東京都港区)など、大規模オフィスも数多く手掛ける一方、コロナ禍によってリモートワークが普及する前から、サテライト型シェアオフィス「H1T」(エイチワンティー)を全国展開するなど、企業規模や利用シーンに合わせたさまざまなオフィスブランドを展開している。

このように、ハード面では入居テナントのニーズに十分に応えているが、さらなる付加価値を提供したいという思いから、ソフト面での支援も強化することにしたのだ。