多様な個人の活躍を推進する
ジェンダーダイバーシティ委員会が発足
同社では21年にグループを横断する「ジェンダーダイバーシティ委員会」を設置し、和田社長の管掌下、パーソルキャリア取締役執行役員の喜多恭子氏が委員長に就任した。実は喜多委員長、過去に女性活躍推進に関するプロジェクトに参加した経験を持っている。
喜多恭子
取締役執行役員
パーソルグループジェンダーダイバーシティ委員会委員長
きだ・きょうこ/1999年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。派遣・アウトソーシング事業、人材紹介事業などを経てアルバイト求人情報サービス「an」の事業部長に。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、2019年に執行役員・転職メディア事業部事業部長。22年4月より人事本部長。23年4月よりdoda事業本部長に就任。
「以前参加したプロジェクトは全て目標を達成できませんでした。そこで私が痛感したのは、こういったプロジェクトでは何よりトップの強い意志が必要であるということです。今回、私がジェンダーダイバーシティ委員会の委員長を引き受けたのも、和田社長の強い意志を感じたからです。また、ここ数年、育児に積極的に参加したい男性社員が増えたことはもちろん、ダイバーシティや女性活躍推進に関して他の企業とお互い相談できるケースが増え、社会全体の雰囲気や考え方も変わってきていることも実感しています。そんな中でわれわれが最初に解決すべき課題として考えたのが女性活躍です。DI&Eに関する課題で、『明確な数値』で現状と目標を設定できるものはそう多くない中、男女の社員比率と管理職比率が同等ではなかったので、課題は一目瞭然でした」(喜多委員長)
22年2月にジェンダーダイバーシティ委員会は重要な指標として、女性管理職比率37%を30年までに実現する目標を発表した。この数値は政府が目標としている30%を大きく上回っている。ただし、この数字は単に高い目標を設定したわけではなく、当時のパーソルグループの男女社員の比率と同期して決められたものである。
ジェンダーダイバーシティ委員会の立ち上げから、トップコミットメント・マネジメント体制、管理職の意識改革、社員の意識改革の三つの軸で、さまざまな施策の実施と体制整備を行ってきた。
23年4月現在、女性管理職比率は24.4%で目標だった23.8%を超える結果となった。「30年の目標達成に大いに手応えを感じています」(喜多委員長)。
座談会やアンケートで知る現場の声
上と下から変化を促していく
ジェンダーダイバーシティ委員会の施策の中で、トップコミットメントや経営層の意識変化のために実施したのが「座談会企画」だ。女性活躍推進やダイバーシティに関する取り組みは、トップダウンで行われることが多い。しかし、パーソルグループでは座談会や社員アンケートなどを通じて現場のリアルな声をしっかり吸い上げて施策に生かしていこうと考えた。
座談会は、大人数で行われる会議や報告会の形式ではなく、現職の女性管理職4人が各グループ会社の経営層1人という小規模で行われ、じっくり本音で話し合った。22年度に同座談会は計15回も行われ、女性社員にとっては経営層に直接意見を伝える貴重な機会となり、経営層にとっては女性活躍推進につながる具体的な施策を膨らませ、さらに方向性のずれを防ぐことができる。
座談会の場では、「ワーキングママの夜6時以降のスケジュールが、どれくらい忙しいか分かりますか?」「活躍してほしいと言われても現実的に難しい」など、さまざまな声が経営層に伝えられた。
こうして、「社員の声を聞く」ことで、「当たり前」に思っていた働き方や前例は、誰かにとっては仕事上の活躍を妨げるものであるという事実に気付くことができたという。
座談会に参加した和田社長もその気付きをこう語る。「私自身、どこかで『飲みニケーションは大事』と思っていた部分があります。しかし、飲み会で情報が取れるということになると、行きたくなくても無理して行かざるを得ない。お子さんがいる女性社員へ、私自身は配慮する気持ちで『来なくてもいいよ』と伝えていましたが、実はそれは同じチームでも情報の不公平を生んでいたのです」と語る。
これは「残業」においても同じこと。残業することが当たり前、または残業ありきをベースとした働き方の場合、子育てや介護などで残業という選択ができない社員は、活躍する場が狭まってしまう。
そこで、長時間労働・残業を減らしていくべき、という根本的な働き方の変化が必要であるという。