第1回:脱炭素化が困難な産業にこそ環境投資が必要! 脱炭素社会実現を後押しする「トランジション・ファイナンス」の正体経済産業省 畠山陽二郞 産業技術環境局長

トランジション・ファイナンスと
グリーン・ファイナンスはどう違うのか

「トランジション・ファイナンス」のトランジションは、「移行(transition)」のこと。トランジション・ファイナンスは、鉄鋼やセメント、化学など温室効果ガスを多く排出する産業に対し、カーボンニュートラル達成に向けた長期的な戦略をサポートする新しい金融(投資・融資による資金供給)の仕組みだ。

温室効果ガス多排出産業は、脱炭素技術の開発や製造プロセスの革新、エネルギー転換が必要となるが、それらは一朝一夕というわけにはいかず、長期間の環境投資を続けなければならない。しかしそれでは目先のそろばんが合わず、経営者は投資に二の足を踏むし、投資家や金融機関は敬遠したくなる。そこで、国がトランジション・ファイナンスによる資金供給の仕組みを作り、グリーン化を後押ししようとしている。

そう聞くとグリーン・ファイナンスをイメージするかもしれないが、こちらは再生可能エネルギーのような温室効果ガスの排出がない、または少ない企業やプロジェクトへの資金供給に利用が集中していた。トランジション・ファイナンスはカーボンニュートラルへの“途上企業”に対する金融支援により主眼を置く。

“途上企業”の多くは鉄鋼やセメント、化学というような高い国際競争力を持ち、産業の基盤としての重要な役割を果たす企業であり、日本が成長を続けるためには欠かすことのできない基幹産業だ。経済産業省の畠山陽二郞・産業技術環境局長はトランジション・ファイナンスとグリーン・ファイナンスの立ち位置の違いをこう説明する。

トランジション・ファイナンスの仕組みを試験勉強に例えると……。