古屋 当社は2015年に創業し、カジュアルゲーム(無料ゲーム)アプリの開発からスタートしました。現在はカジュアルゲームを中心とする「メディア事業」が売上高の約3分の2を占めていますが、残り約3分の1は、後から始めた「電話占い」や「恋愛相談」などの「プラットフォーム事業」で稼いでいます。

ちなみに「電話占い」とは、ユーザーと占い師(アドバイザー)をオンラインでマッチングし、プライバシーが守られた状態で電話による占いが受けられるもの。「恋愛相談」は、同じ仕組みで恋の悩み事などが相談できるサービスです。

さらに、まだ収益の柱にはなっていませんが、NFT(非代替性トークン)などの暗号資産を使ってアイドルグループを応援する「エンタメテック」などのWeb3事業も手掛けています。

杉村太蔵さんが、創業からたった5年で株式上場した『デジタルビジネス・コングロマリット』東京通信グループに迫る!杉村さんの矢継ぎ早の質問に、独自の切り口で明快に答えていく古屋CEO

杉村 その上VC(ベンチャーキャピタル)事業や、有望なスタートアップへの直接投資なども行っているんでしょう? ゲーム1本で勝負するという考えはなかったんですね。

古屋 正直、事業は何でも良かったんです。こんなことを言うと投資家の皆さんから怒られるかもしれないけど、僕が創業当初から願ってきたのは、ユーザーの皆さんに「ささやかな幸せ」を提供したいということなんです。

杉村 と言うと?

古屋 今の世の中って、欲しいモノやサービスは何でもそろっていて、「これ以上何が必要なの?」と思うほど生活ニーズは満たされていますよね。1人1台以上スマートフォンを持っているので、情報にも困らない。

でも、モノや情報があふれ返ったことで、過分な疲れやストレスをため込んでしまっている人も多い。そんな人たちに、デジタルやオンラインを使って、ちょっとした「喜び」や「癒やし」を提供できたら、と思ったのが起業のきっかけなんです。

杉村 その目的にかなう事業を探して、たまたまたどり着いたのがカジュアルゲームだったということ?

古屋 そんな感じですね。なので、今や主力事業ではあるものの、「ゲームで世界を変える」といった野望は一切持っていません。もちろん、既存事業は可能な限り極大化するつもりですが、目的にかなった新しい事業が見つかれば、そちらにも経営資源を積極的に投入していきたい。

3年後には、「メディア事業」や「プラットフォーム事業」を上回る“事業の柱”が育っているかもしれません。人に「喜び」と「癒やし」を提供する「デジタルビジネス・コングロマリット」を目指しています。

杉村 「東京通信グループはゲームの会社だ」と思っている投資家が聞いたら、びっくりするような発言ですね。一般に株式投資家は、トヨタ自動車なら「車」、花王なら「日用品」といった、ブレない事業ドメインを定めて成長に突き進む銘柄を好みがちだけど、それを裏切られる可能性もあるわけだから。

厳しい目にさらされながら経営するために上場を決意

古屋 もちろん上場企業なので、投資家の皆さんの期待を裏切らないように、事業の成長や企業価値の向上はしっかりと目指していますよ。ただ、そのやり方が“普通の会社”とはちょっと違うだけなんですよ。