古屋 当社のカジュアルゲームのダウンロード数は3年連続国内ナンバーワン(※1)となり、おかげさまでグループ全体の売上高も23年12月期に過去最高を記録しています。売上高の約3分の2をゲームなどの「メディア事業」が占めているので、今の東京通信グループの屋台骨はゲームに支えられていると言っても過言ではありません。
でも、ゲームだけに依存する成長では“爆発力”に限界があるのも事実。「電話占い」などの「プラットフォーム事業」が第2の柱として育ってきたように、第3、第4の事業の柱を次々と育て上げて、成長の“爆発力”を高めていきたい。それが、投資家の皆さんに報いることにつながると僕は信じているんです。
杉村 普通の上場企業とは、成長へのアプローチが違うということだね。面白そうな会社だと思っていたけど、ますます興味が湧いてきました。ところで、東京通信グループは、創業からたった5年で株式上場を果たしたと聞いています。これって、ものすごいスピードですよね。
古屋 上場準備を始めたのが18年ごろで、20年には東証マザーズ市場(現・グロース市場)に上場したので、実際の準備期間は2年です。
杉村 ええーっ。それって最短ですよね。上場するには、申請直前2期分の会計監査を受けなければならないので、最低でも2年、審査が通らなければ5年、10年かかるケースもあるけど、一発でパスしたんですか?
古屋 できちゃいましたね。東証も、僕たちが描く成長ビジョンや、潜在成長力を評価してくれたのかもしれません(笑)。でも、もともと上場するつもりはなかったんです。未上場の方がスピード感を持った経営ができるので、早く成長できるだろうと思っていましたから。
杉村 それがなぜ、変わったんですか?
古屋 創業から2、3年がたって、若い社員が増えてくると、彼らのためにも信用、信頼のある会社にならなければと思うようになりました。それに上場企業は、監査や株主の皆さんの厳しい目にさらされながら経営するので、おのずと経営が効率化して、成長にもプラスに働くだろうと判断したのです。
もちろん、経営のフリーハンドは奪われるし、情報開示や説明責任など、いろいろと面倒なことはありますが、「どちらが合理的なのか?」をてんびんにかけて、上場を選びました。
杉村 すごく正直なコメントですね。上場企業の経営者って、こういうインタビューではなかなか本音を吐かないものですが、古屋CEOの話を聞いていると、建前ばかりじゃなく、本音もどんどん出てくるので、すごく好感が持てます。
「古屋CEOは本音をはっきり言うけど、人を傷つけないね」
古屋 いいのか、悪いのかは分かりませんが、どんな場所やシチュエーションであろうと、自分が思っていることは、常に正直に話すようにしています。その場の状況に応じて建前を使い分けると、発言がブレてしまいますからね。
杉村 とてもいいと思う。僕が投資家として銘柄を選ぶ際には、事業の中身や成長期待はもちろんだけど、何よりも経営者の人柄に注目します。古屋CEOのように本音をはっきりと言ってくれる経営者なら、「会社をこれからどうしていくつもりなのか?」ということが明確に伝わるので、逆に安心感がありますよね。
しかも、ただ本音を語るだけでなく、その裏側に深い“思いやり”も込められている感じがします。「社員のために」とか、「株主のために」とかね。やっていることは“普通の会社”とは違うけど、ステークホルダーを思いやる気持ちは、他の会社以上に強いんじゃないかな。
古屋 何だか、すごく褒めますね(笑)。自覚はありませんが、とてもうれしいです。
杉村 ところで、新しい事業としてWeb3に取り組んでいるそうなので聞きたいんですが、NFTって、地方の町おこしにも使えると思いますか?
古屋 と言うと?
杉村 僕は今、旭川(北海道)や下関(山口県)などの商店街の活性化を支援しているんだけど、NFTを使えば、もっと人を呼び込めるんじゃないかと考えているんです。
古屋 結論から言うと、難しいと思いますね。
杉村 ありゃ!
古屋 人を呼ぶためには、その場でしか手に入らないものを提供するのが効果的ですが、どこにでもあるような商店街では難しいですよね。しかも、ありふれたモノやサービスと交換するのなら、あえてNFTを使う必要はありません。
東京通信グループは、NFTを流通させてアイドルの活動を応援するプロジェクトを支援していますが、これはアイドルという希少価値が高いコンテンツだからこそ成立するビジネスモデルなのです。同じモデルを町おこしに当てはめるには、かなり工夫がいるのではないでしょうか。
杉村 はっきり言うねぇ。でも、思いやりを感じるので、何となくすっきりしました。古屋CEOは、ズバズバ言うけど、人を傷つけないタイプだね。
古屋 それも一応、褒め言葉ですよね(笑)。
杉村 とにかく、そんな古屋CEOが率いる東京通信グループという会社にがぜん興味を持ちました。これからの発展に大いに期待してます。今日はありがとうございました。
※1 Sensor Towerのスマートフォンアプリ統計データ「日本企業ゲームダウンロード数ランキング(日本市場/Android,iPad,iPhone統合データ) 対象期間:2021年1月1日~2023年12月31日」にて第1位