AIを活用した労災防止ソリューションが続々と登場

人手不足や、経験の乏しい作業員の増加が課題となる一方、建設・土木業においては、工事件数の増加も労災事故を招く要因となっている。

今、日本では、高度経済成長期に整備された道路や橋りょう、水道などの老朽化が進んでいる。これらの社会インフラを更新するための工事は年々増え続け、ただでさえ足りない人手との“逆ザヤ”が広がっているのだ。

国は、ドローンや自動運転建機などを使ったICT土木(i-Construction)の普及を後押ししているが、人手を完全に排した建設・土木工事は不可能である。工事の件数が増えれば、掛け持ちなどで作業員の負荷が増大することは間違いなく、労働安全対策の強化は喫緊の課題であるといえる。

製造業の現場でも、人手不足を補うため、製造プロセスのオートメーション化(自動化)を推進する動きが活発だ。人が行っていた作業を機械にやらせれば、労災事故は減るのではないかと思いがちだが、実は大きな落とし穴がある。

自動化に合わせて現場の作業員を減らすと、むしろ1人当たりの作業量は増大し、事故を招く危険性も高まるのだ。「自動化」イコール「安全対策の強化」という固定観念は拭い去り、それぞれに施策や対策を考えるべきである。

以上の状況を踏まえ、これからの労働安全対策として検討したいのは、AI(人工知能)などのデジタルテクノロジーを活用した事故防止策である。

例えば最近では、社内や社外に蓄積された労災に関する膨大なデータをAIが解析し、工事内容ごとに最も効果的な事故防止策をレコメンドしてくれるAIソリューションが注目を集めている。従来はベテランの管理者や作業員が、自らの経験に基づいて他の作業員に防止策を伝えるのが普通だったが、比較にならないほど膨大な災害事例を収集し、高度な解析によって最善の防止策を提案してくれる点が評価されているようだ。

また、カメラとAIによる画像解析技術を組み合わせ、現場における作業員の危険行動を感知して、アラートを発報するソリューションもある。「やってはいけない作業」をあらかじめルール化し、撮影された作業員の動きがそれに符合するとAIが判断すると、サイレンや回転灯などで注意喚起をする仕組みだ。危険な動きの映像は保存できるので、作業員の教育用動画として利用することもできる。

ESGやSDGsが重視される今日、企業には、これまで以上に確かな労働安全管理が求められている。社会からの信頼を損なわないためにも、最新ソリューションの導入を検討してみてはどうだろうか。