静かに生産性が低下するビジネスケアラー
超高齢社会に突入した日本。2025年には最大の人口ボリュームである約800万人の「団塊の世代」が全員75歳以上となる。「今後は、医療や介護を必要とする85歳以上の人口が急増していきます」と話すのは、国際医療福祉大学の石山麗子教授だ。
「介護の必要な人が増えれば、必然的に介護に携わるケアラーも増えます。具体的には75~85歳以上の方々の子どもである40〜50代です。職場でも中心的な存在の彼らが、仕事をしながら介護をするビジネスケアラーになっていくわけです」
ビジネスケアラーの人数は、30年に約318万人となる見込みだ(図1)。これは、労働力人口の21人に1人に相当する。つまり、「同じ社内で複数人が同時にビジネスケアラーになる可能性が十分にある」ため、業務へ及ぼす影響も大きくなる。
出典:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向け ガイドライン
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「問題は、生産性が低下しても周囲が気付きにくいことです。介護はまさに家族の悩み。誰にも本音を言えずに抱え込んでしまうことはよくあります。上司にいつ話そうと思いつつ、自身のキャリア形成が気になってなかなか話せない人も多いです」
次ページからは、ビジネスケアラーが介護のリスクを回避するために必要な心構えと、今企業に求められている支援について紹介していく。