グローバル化が進むにつれ、異文化間の隔たりや衝突が顕在化する機会もまた増えていく。自身の文化的アイデンティティを守りながら、異文化にうまく適応するにはどうすべきか。そして多文化混合型のチームを、どう率いればよいのか。異文化マネジメントの専門家、アンドリュー・L・モリンスキーの記事を6回にわたってお届けする。


 次のような状況を想定してみてほしい。とある交流イベントに参加しているあなたは、部屋の向こう側に、自分が関心を持つ企業の人がいるのを見つけた。あなたはその人のところへ行き、相手の目を見ながらこう言う。

「こんにちは。IBMの方かと存じますが、私は御社に非常に興味を持っております。私のバックグラウンドについてぜひ知っていただきたいのですが」

 私は最近あるセミナーで、アメリカ以外の国で生まれ、現在アメリカで働く専門職の面々に、このシナリオを提示した。そして「アメリカの文化規範に照らすと、この人の言い方は次のどれに該当すると思うか」と尋ねた。

(a)ぶしつけすぎる
(b)遠回しすぎる
(c)適度に率直である

 さらに、アメリカ生まれの専門職たちにも同じ質問をしてみた。2つのグループの回答には、明らかな特徴が見られた。

 アメリカ生まれの回答者は全員(c)と答えた。この言い方は適度に率直であり、アメリカで人脈づくりのための会話を始めるにはふさわしい方法だという。

 これに対して、外国生まれの回答者は、同じ状況について大きく異なる見方をした。アメリカでの生活と職務経験が豊かなごく少数の人々は、アメリカ人と同意見だった。しかし大多数は(a)と答え、そのような振る舞いはアメリカにおける交流会ではぶしつけで自己主張が過ぎる、としたのである。

 続けて、私は別の質問をした。あなたは数分後、部屋の向こうに、他にも興味のある会社の人がいるのを見つけた。あなたはその人のところに行き、遠慮がちにこう言う。

「こんにちは。私は○○と申します。あなたにお会いできて非常に光栄です。自己紹介をさせていただいてもよろしいでしょうか」

 今度もセミナー参加者に、アメリカの文化規範に照らしてこの発言がどれほど適切かを評価してもらった。次のどちらになるだろうか。

(a)適度に丁寧である。交流イベントで人と話す時――特に、相手の年齢や職歴が自分より上である場合――十分に敬意を表することがアメリカでは重要である。

(b)丁寧すぎる。年齢や職歴が上の相手と話す時でも、過度にへりくだったり、丁寧すぎたりしないことが重要である。なぜなら、自信とプロ意識が足りないように見られてしまうからだ。

 ここでも再び、アメリカ生まれの人は皆が(b)と答えたのに対し、外国生まれ(多くはインド出身者)の大多数は(a)を選び、状況に見合った礼儀正しさであると答えた。