東京のキーワードは「湾岸」
12月の模試結果から、今度は東京の状況を見ていこう。まずは、倍率の緩和が予想される入試である。いずれも大学の付属校で、女子校では2日の大妻が2倍割れの1.8倍予想とかなりのお得感となりそうだ。共学校の女子では、帝京大学が1日午前と2日午前共に倍率が半減して1.6倍、男子も同様に半減傾向の予想となっている。共学校の男子では2日の明治大学付属明治が2.0倍予想とたいへんに受けやすくなっている。
では逆に、志願者増で11月模試よりも倍率が上がりそうな入試を見ていこう。別学・共学を問わず、いずれも女子受験生の数値であることをまずお断りしておきたい。
女子校では、以前も指摘したように山脇学園の勢いが続いている。1日午前は3.7倍、2日午後は5.2倍と大きく増加している。1日では女子聖学院が3.3倍、2日午前では江戸川女子4.1倍、跡見学園3.7倍と人気化している。
共学校でも女子の倍率が大きく上がっている入試が目立つ。1日午前では、校舎も新しい東洋大学京北の6.1倍、東京都市大学等々力4.5倍、青稜3.8倍、日本大学第一3.7倍、午後では開智日本橋学園5.3倍が目を引く。いずれも1ポイント前後倍率を上げている。同じく2日午前では青稜3.8倍、午後では淑徳巣鴨6.8倍、青稜5.8倍、開智日本橋学園5.4倍が目立つ。
ここで2021年入試の一つの傾向として浮かび上がってきたキーワードが「湾岸」である。必ずしも学校が東京湾岸地区に立地している必要はない。これまで挙がった学校は湾岸から比較的通いやすい。湾岸のタワーマンションに住んでいる高学歴・共働き・世帯年収1000万円超えという属性が、いまどきの中学受験の主流をなしている家庭像に当てはまる。そうした湾岸タワマンキッズが中学受験に参入してきた様相がうかがえるのだ。そこに目を付けた一部の学校では、タワマンの集会室に出向いて学校説明会を開く動きまで出ている。
ところで、新型コロナ禍が家計を直撃したことで、年収特待により在校生や受験生を支援しようという動きは少しずつ広がっている。いずれも募集を終えたが、開成の開成会道灌山奨学金や、これまで制度はあってもほとんど表には出ていなかった東洋英和女学院の村岡花子基金などが見直されている。大妻には中高生を対象とした学校法人の育英奨学基金の他にも、父母の会の育英基金や大妻コタカ記念会育英奨学金もそろっている。二松学舎大学附属柏では年収400万円以下の世帯に仁愛奨学金を設けている。たとえ世帯年収が200万~300万円の生活保護世帯水準の生徒でも受験して学業を続けられるような支援制度があるということは、私学の志としては大切なものではなかろうか。
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(2021年1月19日14:55 ダイヤモンド社教育情報)