偏差値50前後の学校で競争激化へ
三つの模試の4月実施分受験者数を合計して2019年と比べると、10.1%の増加となる。これに生徒募集が好調なSAPIXの4月実施分参加者(+14.9%)を加味すると、四つの模試平均では+11.8%とさらに増加幅が大きくなる。
入試本番の受験生が1割以上増加するというわけではないが、全体的に志願者が増加傾向にあることは間違いない。小6人口は、東京では微増、埼玉や千葉は微減傾向である。コロナウイルス感染症のまん延する状況が2022年にも継続した場合、隣接3県の入試に向かう東京からの受験生は、2021年入試でも顕著に表れたように減少傾向が続くことになる。
2021年入試結果を、AからHまで5刻みの学校ランク(四谷大塚の合不合80結果偏差値)ごとに見てみよう。ここで示された結果は2022年入試でも継続することになるからだ。
現在、首都圏中学受験のボリュームゾーンは偏差値40台のE(45~49)とF(40~44)ランクの学校にある。共学校が主体で、付属校も系列大学への内部進学と他大学への受験が併存する“半付属校”が基本となる。また、私立校の数が限られている千葉はEランクが多い。その点、神奈川は学校の幅が広く、コロナ禍で東京からの受験生も減少気味なので、競争状況は全体的に緩和傾向にある。埼玉ではD~Fランクがメインである。
2021年入試では、特にEランクの伝統女子校が人気化した結果、前回記したように、偏差値が上方修正されて中堅校と呼んでいるD(50~54)ランクに向かっている。2022年入試では、中位校から中堅校へ人気校がシフトする傾向が継続しそうだ。その結果、こうした学校の実質倍率も、2倍台半ばから3倍弱程度に厳しくなることが見込まれる。
Cランク以上となる“55の壁”を越えるには学力の飛躍が必要となる。これは少なくとも 2年間の学習の蓄積が受験生の内部で熟すことが前提となる。その点、“50の壁”は基本的な問題にきちんと正答できることで越えることができる。その意味でも、夏休みにしっかりとした学力を付けることが大切だ。
ここまでは80%偏差値で見てきたが、夏休みが終わるまでは学力が伴っていないので、5ポイントほど低めに表示される50%偏差値を参考に志望校を眺めた方がいいだろう。特にスロースターターの受験生には、その方が合っている。