「高大接続」に乗り出した私立医科大
私大医学部の学校推薦枠は、限られた学校には以前から存在した。ある伝統女子小中高一貫校では、その枠は医師の娘に適用されることが暗黙の了解になっているなど、あまり喧伝(けんでん)されず、ひそやかなものだった。
新型コロナ禍の間、学校推薦枠が注目されるようになる。日本医科大は、入学定員のうち6人分を早稲田大の系属・付属校を対象とする学校推薦型選抜に回した(2020年9月)。医学部医学科を持たない早大の付属校である早稲田大学高等学院と早稲田大学本庄高等学院、系属校の早稲田実業学校にとっては貴重な進学先を確保できたわけで、双方にメリットがある。
慶應義塾大や日本大、東海大や近畿大などでは、系列校からの医学部医学科への内部進学枠は以前から存在していた。獨協医科大学は21年度入試から、付属校である獨協と獨協埼玉を対象に系列校推薦枠を一挙に10人分設けた。これまでのところ男子校の獨協に多く適用されているものの、そのインパクトは大きく、中学入試での両校の人気向上に結び付いた様子がうかがえる。
医療系4学部を擁する昭和大は、医学部の推薦入試を、高大連携協定を結んだ高校と特別協定校選抜入試として実施している。その枠は2人分と多くはないが、対象校が中学受験ではいずれも中堅校である昭和女子大学附属昭和と森村学園というところが特徴的だ。
東京慈恵会医科大は、21年10月に二つの難関・上位中高一貫校と協定を結んだ。所在地が近い男子校の芝中学校高等学校と、東京女子御三家に比肩する存在となった豊島岡女子学園中学校・高等学校である。生命科学や医療分野の探究活動を中心に連携・相互交流を行うのだが、どちらも医学部に進む生徒は以前から相当数いるだけに、優秀層の確保という大学側の気持ちがより表れているように思える。
高校向けの出張講義では国際教養学部が模擬授業を行っているものの、順天堂大は、医学部を軸に医療看護・保健看護・保健医療・医療科学など全8学部を擁する。13校に及ぶ高大連携協定を結んだ顔ぶれを見ると興味深い。
共学の私立高校では、医学部と付属病院に近い昭和第一とは2015年3月からと早く、他には佐久長聖、関東国際、公立ではキャンパス所在地に近い千葉県立八千代、静岡県立三島南、市立沼津がある。私立男子校は城北のみだが、女子校は吉祥女子、恵泉女学園、神田女学園、北豊島、川村、東京女子学園(23年から共学化して芝国際に)と多い。直近の例は今年2月締結の北豊島だが、女子校の方は中学受験時の難易度の幅が広いことからもうかがえるように、必ずしも医学部が対象というわけでもない。