「成り上がり受験」の組み立て方

 ご自身の大学入試を思い起こしてほしい。1月半ばに大学入試共通テスト(以前はセンター試験であり共通一次であった)を受け、2月からは私立大の入試が始まるが、最難関の早稲田と慶應は2月の中旬以降に設定されている。そして、国公立大の二次試験が行われていた。つまり、日程が進むほど難度が上がるように日程が組まれていたわけだ。

 このように、理想的な受験の進み方は、まず1校の合格を得て気分が上がってきたところで、難しい学校にチャレンジしていくという並び順である。1月10日に解禁される埼玉で、模試代わりのお試し受験で合格を得るというのが首都圏中学受験の常道となっている。

 その点、神奈川の受験生は、埼玉や千葉の学校は通学時間を考えると足が遠のくこともあり、みんながこの道を通るわけでもない。そうなると、2月1日が最初の入試となる。ここから午後入試を受けたとしても、3日までの数回の受験で合格を勝ち取らなければいけなくなる。

 いざ受験となったとき、1日受験校で合格を勝ち取り、2日、3日のチャレンジ校である第1志望に向かうというのが最も望ましいパターンとなる。東京の場合は1日午前に一度きりの入試を行う難関校がそろっているので、例えば開成や桜蔭が本命の受験生は1月の渋谷教育学園幕張で合格を勝ち取り、心の余裕とダメだったときは行く先があるという安心感で受験をすることになる。そうでなければ、1日午前がチャレンジ校で、あとはそこを補う併願先が続くというパターンだろう。

 その点、神奈川の受験生は恵まれている。神奈川の私学が東京に遠慮しているのか、難関校でも1日に入試を設定していない。1日午前一度きりは、フェリス女学院のみだろう。女の子の場合は、小5あたりで反抗期を経ていて精神的には大人なので、その点は安心なのだが、やはり早めに合格を一つ得てから本命校もしくはチャレンジ校の受験に臨むということは大切になってくる。

 トップ受験生の併願先としては、2日からの豊島岡女子学園をすすめる塾関係者は多いようだ。あるいは、湘南白百合学園や鎌倉女学院となる。

 男子は選択肢が豊富にある。1日に東京の難関校を受けたら、2日には聖光学院や栄光学園がある。3日の浅野が本命の受験生は、1日と2日の攻玉社で合格を得て、安心して浅野に臨むというのが王道である。

 安全校として設定した第3志望や第4志望の学校が、緒戦で不合格になった際にはどうするのか。同レベルの学校でとにかく合格をつかむことが重要になる。そうなると、チャレンジ校や本命校と考えている場合ではなくなる。

 偏差値60までの学校の入試は選ぶための入試なので、問題にも汎用性がある。その点、難関校と呼ばれる学校は落とすための入試なので、どこもクセがある。つまり、両者の受験対策には違いがあるわけで、その点も併願作戦には織り込んでおく必要がある。