付属・系属校からの狭き門の先にあるもの
今回の系属校協定では、25年4月から以下の点が決まった。校名は変更せずに通称名を「順天堂大学系属理数インター」とする。横浜市にある青山学院大の系属校でもそうだが、こうした系属校協定による契約は6年といった一定の期限が設けられ、都度更新されるのが一般的なようで、今回もこれにならった。
宝仙学園のこの4月からの新高3生には、医学部数人の内部進学枠が設けられる。もちろん、他の学部についても今後、内部進学枠が多く設けられることになる。医学部内部進学枠が設けられることに対応して、宝仙学園の共学部では、中高の入試に「(仮称)医学部進学コース」を25年度入試から新設する。これにより、入試難度は大きく上がることが予想される。入試内容についても見直しがあるかもしれない。
生き残りをかけた私立大が高大連携協定を結び、指定校推薦入試を設ける動きは、ここ数年、日本女子大や東京女子大といった有名女子大をはじめ、中堅の大学で相次いでいる。その点、医学部を擁する私立大の場合は、保護者への訴求力は大きい。順天堂大も現在の約30校から50校へと高大連携協定を24年度内にも増やす考えだ。
23年11月には、医学部を擁する北里大の北里研究所と順天学園(東京・北区)との学校法人合併に向けた基本合意書締結が明らかになった。順天中学・高等学校は、26年度から北里大の付属校となる。
関東圏にある私立大医学部の現状を見ると、指定校推薦を維持しているのは、北里大、獨協医科大、埼玉医科大で、聖マリアンナ医科大と東京女子医科大は指定校推薦をやめて、「0次入試」の異名もある一般学校選抜あるいは地域枠に移している。
付属校からの内部進学枠を見ると、慶應義塾大の40人強は別格として、東邦大は2つの付属校(駒場東邦と東邦大学付属東邦)対象に約25人、東海大が20人、獨協医科大が2つの付属校(獨協、獨協埼玉)対象に10人、日本大が10人といった具合である。
他に、日本医科大が早稲田大の系属・付属校(早稲田大学高等学院、早稲田大学本庄高等学院、早稲田大学系属早稲田実業学校高等部)から6人、昭和大は特別協定を結んだ2つの学校(昭和女子大学附属昭和、森村学園)に2人という枠を設けている。
このように、内部進学が可能であっても、医学部は狭き門には変わりない。協定を結んでも、多くの生徒は医学部以外の学部に進むことになる。順天堂大の場合は、08年からの医学部学費値下げの前、学長を経て04年からトップに就いた小川秀興理事長の下、拡大路線が20年にわたって推進されていることが大きい。
24年新設の薬学部(浦安・日の出キャンパス)以前にも、04年に医療短大から改組された医療看護学部(浦安キャンパス)、10年の保健看護学部(三島キャンパス)、15年の国際教養学部(本郷・お茶の水キャンパス)、19年の保健医療学部(同)、22年の医療科学部(浦安・日の出キャンパス)、23年の健康データサイエンス学部(同)といった具合で、20世紀には医学部と体育学部改めスポーツ健康科学部のみだったものが、9学部を擁するまでに拡大している。さらに10番目の学部の新設も模索されている。
一方、医学部の附属病院は、文京区の順天堂医院(1051床)を筆頭に、静岡病院(633床)、浦安病院(785床)、順天堂越谷病院(226床)、順天堂東京江東高齢者医療センター(404床)、練馬病院(400床)と6病院3499床もある。
これに加えて、27年開業予定で、さいたま市緑区の埼玉高速鉄道「浦和美園」駅を最寄りとする新病院(800床)の設立が進んでいる。これらの病床数を合計すると、日本の大学では最大規模となる。とはいえ、浦和の新病院で必要とされるスタッフ数も膨大であり、医師300人、看護師800人、検査技師など多くのスタッフを集めなくてはならない。
国際教養学部を除けば、医療系の学部で占められている順天堂大にとって、こうした医療施設を支えるスタッフ養成のため、安定的に優秀な人材を集める高大連携は必須であり、今回のような系属校協定も、先行きを考えると必然的な施策であったといえそうだ。