全校生徒が礼拝を行う講堂(香蘭女学校礼拝堂)。戦後配置されるようになったチャプレン(学校付き牧師)の他、鈴木校長も週1回、毎朝のお話を担当している

立教学院グループの一員として

――立教学院の一員として、中高大の一貫連携教育をもっと深めていくことになりますか。

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、88年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

鈴木 立教大学の持つ知の力の恩恵に浴することは、中高生にとって魅力的なことです。先程述べたように、生徒1人1人のライフデザインに合った学部学科に優秀な人材が進んでいくことになると思います。学校経営的に考えても、これから先、もっともっと少子化が進んでいきますから、大学との関係はWin-Winの関係になっていくでしょう。

――同じ立教学院の一員でも個性は異なりますか。

鈴木 立教池袋と立教新座が同じ付属の男子校でも違いがあるように、聖マーガレットの立教女学院と聖ヒルダの香蘭女学校とでは、学校の掲げる目標も異なりますし、キャンパスに入っただけでもで違いを感じるものです。それをもっと深めていきたい。

 私学から独自性を取ったら衰退の一歩です。私学は、香蘭でいうところの“香り”、言い換えるとその学校の“味”や“色”が薄れていくと、学校の魅力も薄れていきます。数値化できない香蘭のほのかな“香り”を感じて目指してくれるお子さんに来てほしいと思います。

――それはどのようなものでしょう。

鈴木 立教学院は元々アメリカの聖公会がつくった学校です。もう少し世界に通用するような、「香蘭にしかできないような国際理解教育をやろうよ」と、先ほども担当者と話していたところです。これからそのためのプログラムを考えていこうと思っています。

 例えば、新型コロナ禍で中断していた、共学校の立教英国学院との連携はまだ多くの可能性を秘めています。ちなみに、立教英国学院の前校長が、現在の学校法人香蘭女学校の理事長です。

――ところで、築地にある聖路加国際大も同じ聖公会系ですね。

鈴木 聖路加国際病院の名誉院長だった日野原重明さんも本校の理事を20年ほど務めておられ、その間、子どもたちの健康支援にもご尽力いただきました。今の聖路加病院がある場所は立教中学校発祥の地で、立教学院の原点でもあります。

 聖路加国際大学には公衆衛生や看護学の大学院もあり、私も評議員を務めております。香蘭との連携強化も視野に入れていただき、現在2名の指定校推薦枠の拡大にも期待しています

――立教大には理学部はありますが、工学部はありませんね。国が工学部設置に助成すると言っていますが。

鈴木 大学関係者からは、施設や設備の費用は助成金だけでは到底足りず、ハードルが高いと聞いています。

日本で最初のガールスカウト「日本女子補導団東京第一組」が設立された香蘭女学校。100周年記念碑と当時の団員たち  右の写真提供:香蘭女学校
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