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佐高 信の「一人一話」

オリンピックの解説も明快 
“女三四郎”山口香の直言

佐高 信 [評論家]
【第53回】 2016年8月29日
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 “女三四郎”は静かなたたずまいで、対談会場の山の上ホテルに現れた。三四郎は言うまでもなく、柔道小説の主人公である姿三四郎の三四郎で、3年前の初夏に私がホストの『俳句界』の対談にゲストとして彼女を頼んだのだった。俳句の話をするためではない。山口は経歴などを見れば、激しいひとという印象を受けるが、そうではなかった。たとえそうであっても、いつも激しいわけではなく、怒るべき時に怒るわけで、エネルギーを集中させるのである。

お互いすごく似た境遇!?

 「柔道界の中にいて山口さんのように、はっきりと発言をするのは大変なのではないかと思うんですが、リアクションはどんな感じですか」と切り出すと、山口はこう答えた。

 「賛否両論あります。応援してくれる人がいれば、批判的な人も当然おられます。でも不思議なことに、どちらの意見も直接私に向かって来ないんですよ。様子見というか、あまり触れないようにしているというか。何かを発言しても、柔道界以外からのリアクションが多くて、柔道界の人は静観しているんです。あまり関わらないよ、目も合わせないよ、みたいな(笑)。柔道というと、マッチョで強いイメージがあるんですが、意外とチキンが多いんですよ。面と向かって喧嘩できない」

 1984年の世界選手権で日本女性として初の金メダルを取り、88年のソウル五輪で銅メダルを獲得した山口の実績を無視できないということもあるだろう。現在は筑波大学准教授で、日本オリンピック委員会理事、全日本柔道連盟監事を務める。

 「いろいろ直言するから、山口さんに柔道界でポストを与えないようにしよう、みたいな雰囲気はあるんですか」と尋ねると、山口は、「そんなこともないですよ。おそらく、切ってしまうのも恐いんですよね。野放しにしてしまうと、本当に勝手に暴走してしまう危険もあるので。短い紐だと噛みつかれる危険性があるから、ちょっと長めの紐で、でも繋いでいる、くらいの与え方です」と笑った。それで、「私とすごく似た境遇に置かれていますね」と笑い合った。

声をあげよと選手の背を押す

 前回のロンドン・オリンピックで、女子柔道の監督が選手にパワハラをやった問題で、山口は選手の黒幕視されたが、最後は自分たちで訴えなきゃ、と彼女たちの背を押したという。

 「あなたたちは強くなりたくて柔道を始めたんでしょ。それなのに、どうして主張できないの」

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佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

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