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佐高 信の「一人一話」

貧乏と差別の少年時代 張本勲「喝!」の背景

佐高 信 [評論家]
【第21回】 2015年5月25日
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 TBS系テレビの「サンデー・モーニング」で、たまに一緒になるが、番組の中で会釈するだけで話したことはなかった。張本勲はスポーツのコーナーが終わると帰ってしまうからである。私がホストを務める『俳句界』の対談に出てもらって、はじめて味のある話を聞くことができた。掲載は2011年1月号である。

小心者で臆病、不安だから努力する

 まず、「えっ」と思ったのは次の話だった。

 「スポーツ選手で、豪気・豪快・強気の人が大成功した例は少ないです。やはり臆病で繊細で神経質な人のほうが成功する。イチロー、落合博満、長嶋茂雄、王貞治、金田正一も、みんなそういうタイプ。豪快に見えているだけで、陰では毎日こつこつ練習しています。豪気な人は、すぐできてしまう素質と力があるから『そんなもんすぐできるよ』と安心するし油断するきらいがあるんですよ」

 言われてみれば「なるほど」だが、「成長が止まるんですね」と私が合の手を入れると、張本は、「自ら止めてしまうんです。ところが我々みたいに小心者で臆病なやつは、不安だから毎日やる。その積み重ねが結局力になったんだろうと思いますね」と続けた。

 張本によれば、野球選手で一番大事なことは「自分を疑う」ことで、たとえ、その日に4打数4安打だったとしても、たまたまだと思って、常に自分を疑わなければならない。

 だから張本は子どもと一緒に寝たことがなかった。毎日300本の素振りをノルマにして、午前3時か4時にパッと起きてバットを振っていたからである。引退するまで、子どもとは別の部屋だった。

 4月19日の「サンデー・モーニング」で張本がサッカーJ2横浜FCのキング・カズに、「もう、お辞めなさい」と引退勧告したことが話題になったが、張本自身を含む一流選手の努力の凄絶さを知った上でのそれだということを忘れてはならないだろう。

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佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

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