世界の資源エネルギー市場において、米国での動きが波紋を広げている。液化天然ガス(LNG)の輸出計画が浮上したのだ。

 米エネルギー省は9月、30年間にわたるガス輸出を承認した。

 米国の天然ガス会社、チェニエールが、メキシコ湾岸にある米国最大のLNG輸入基地において、輸出用液化基地の併設を打ち出したことを受けてのものだった。

 アラスカ産を除けば、米国からの天然ガス輸出はほとんど前例がないため、認められないというのがおおかたの見方だったが、それを覆す意外な決定だった。

 じつは、数年前まで米国は輸出どころか、世界最大のガス輸入国になると見られていた。ところが、2000年代に入って、新型の天然ガス「シェールガス」の開発が急速に進展、天然ガスは一転、供給過剰となっていた。

 世界のガス需給をも一気に崩したこの「シェールガス革命」によって、08年に100万BTU当たり10ドルを超えていた北米市場のガス価格は現在、3ドル台まで急落している。

 一方、米国以外の欧州、アジア市場のガス価格は、原油価格に連動する仕組みになっており、原油価格の回復とともに上昇していた。欧州は同7~8ドル、日本は同10ドル前後と、米国よりも高値で取引され、いびつな価格の乖離が発生している状況だった。

 チェニエールは、こうした市場間での価格差に商機を見出し、安値の国産LNGを輸出して、差益を稼ぐ狙いだ。ただ今回の承認は、FTA締結国に限られていたため、同社は日本をはじめWTO加盟国への輸出枠の拡大を求めている。

 こうした新たな流通ルートが定着すれば、日本は従来よりも有利なLNG取引が可能となるが、不透明感は強い。

 そもそも液化基地が稼働するのは最短で5年後。市場間の価格ギャップが長期間継続することが、成功の必須条件であり、喜ぶのはまだ早そうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

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