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相次ぐ業績回復はホンモノか?
「リストラ特需」に潜むワナ

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第89回】 2009年8月11日
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 世界の主要株式市場は、景気回復期待の盛り上がりもあり、いずれも堅調な展開を示している。わが国や米国などの先進国、さらには中国などの新興国市場は、すでに年初来高値を更新している。

 そうした展開を支える主な要因には、4-6月期の主要企業の収益が、1-3月期と比較して大きく改善していることが挙げられる。主な企業の収益状況が、当初の予想を上回るペースで改善していることが、投資家心理に明るさをもたらしていると言えるのだ。

 たとえば、昨年秋以降、大きく業績が落ち込んだわが国の自動車産業を見ると、1-3月期に赤字に転落したホンダ、日産自動車はいずれも4-6月期に黒字転換している。

 また、1-3月期に6825億円もの営業赤字を計上したトヨタ自動車は、4-6月期の赤字が1948億円と、前期対比で4分の1まで減少している。

 自動車以外の分野をみても、市場環境が大きく改善したIT関連や、中国向けの輸出が回復しつつある化成品などで、いずれも企業収益の改善が目立っている。

 しかし、「企業収益の改善が、今後の景気回復を確実なものにする」と断じるのは、時期尚早だ。

 まず考えなければならないことは、企業収益の水準が低位に留まっていることだ。最近の企業業績は年初の最悪期を脱し改善はしているものの、依然かなり低水準であることには変わりがない。

 しかも、収益が改善している企業の多くは、売上高が減少している一方で、リストラなどの費用削減が奏功して収益状況が改善している。それは、製品が売れるようになり、その結果利益が拡大する「本来の業績回復」の姿ではない。

 企業がリストラを加速させることは、従業員の削減などの経路を辿って失業率を上昇させ、社会全体の需要を減少させることも懸念される。それは最終的に、景気回復の足を引っ張ることも考えられる。

 もう1つ心配なことは、米国や欧州などの先進国の景気回復が遅れていることだ。中国をはじめとする新興国だけでは、世界経済を支えることはできない。

 特に、世界経済の4分の1の比重を占める米国経済が本格的に回復しなければ、世界経済全体が明確な回復過程に戻ることは難しい。仮に米国経済の回復が遅れるようだと、わが国の企業業績の回復が「一時的な現象」で終わってしまうという不安も払拭できない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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