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医療・介護 大転換

「最期は自宅で」の実現に向けUR都市機構がようやく動き出した

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第62回】 2016年9月14日
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URが乗り出した高齢者ケア

 住み続けてきた住宅で最期まで暮らしたい。どんなに重度の要介護状態になっても馴染んだ生活が一番いい。医療器具に囲まれた殺風景な病室で看取られたくない。自宅が無理なら自宅と同様な生活ができるケア付き住宅で――誰しもが願う老後のあり方だろう。

 こうした考えを海外では「Aging in Place」と呼び、日本では「地域包括ケアシステム」と名付けた。

 だが、現実は医療機関での死亡率が80%近い。在宅医療や在宅ケアが十分に浸透していないため、病院頼みになりがちだ。欧州諸国では医療機関での死亡率は50%前後だ。

 日本で医療機関での死亡率を下げる最も有効な手立てがある。既に住んでいる住宅のすぐ近くに在宅医療や在宅介護のサービスを開設することだ。それには、日本最大の賃貸住宅団地の大家さんがこの方向で動き出せるかにかかっている。

 UR都市機構である。かつての日本住宅公団。何しろ全国の団地で74万6000室の賃貸住宅を抱えている。そのうち半数近くは昭和40年代以前に建てられ、住民の高齢化が急速に進んでいる。

 全賃貸住宅で高齢者がいる世帯率は38.9%。日本全国より1.1ポイン上回っている。平均世帯主年齢は56.8歳。やはり全国平均より2.4歳上だ。いずれも6年前の調査だから、現在はもっと高まっているはず。

 こうした団地住民が要介護状態になると、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど介護施設に入居せざるをえなくなる。だが、同様の機能が同じ団地内にあれば、転居しなくてすむ。状況を自覚し始めたUR都市機構が要介護高齢者向けのサービスにやっと重い腰を上げだした。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

「医療・介護 大転換」

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