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エコカー大戦争!

名を捨てて実を取ったGM「ボルト」は
日産「リーフ」より優れているのか?
~日米電気自動車“狂騒曲”の深層

桃田健史 [ジャーナリスト]
【第63回】 2010年11月25日
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 「さあ皆さん、お待たせしました。2011年グリーン・カー・オブ・ザ・イヤーは…、GMシボレー・ボルトです!」。

LAオートショーでのGMの記者会見。壇上には、ミシガンからカリフォルニアまで実走行して、車体に汚れを残したままの「ボルト」。その周りにはすでに「ボルト」を予約した全米各地のユーザーたち。GMはこうした販促の「演出」が上手い。

 米LAモーターショー(カリフォルニア州ロサンゼルス・コンベンションセンター/一般公開日2010年11月19~28日)の報道陣向け公開日2日目の朝。GM(ゼネラル・モーターズ)期待の星に、またもうひとつ勲章が加わった。ちなみにこの前日の18日朝に、GMはニューヨークとカナダ・トロントの両証券取引所に再上場を果たしている。

 舞台のカーテン奥から姿を現した「ボルト」に対して、会場からの拍手は少なかった。詰め掛けた300人ほどの自動車業界関係者、メディア関係者のあちらこちらから、ため息が漏れた。会場内では、GM関係者の喜びの声が記載されたプレスリリースが一斉に配られた。

 ここ数ヶ月間、アメリカの国内メディアは良くも悪くも「ボルト」を大きく扱ってきた。“良く”とはGM復活のイメージリーダーとして、“悪く”とは「ボルトは電気自動車だ」というGMの主張に向けられた疑いについて、である。

 後者の問題を、簡単に振り返ると次のような流れだ。

 GMは「ボルト」を「レンジエクステンデッド・エレクトリック・ヴィークル(航続距離延長型・電気自動車)」と呼んでいる。これは、技術的にはシリーズハイブリッド方式であり、エンジンは発電機のみとして作動し駆動力はモータのみ、のはずだった。だが量産型「ボルト」では、「走行中にエンジンが駆動力として加わることがある」と判明。これでは「電気自動車というよりハイブリッド車にかなり近く、GMの表現は消費者に誤解を招く」という論調が全米に広がったのだ。

 こうした様々な「ボルト」評を受けて、今回の受賞でもメディアが「ボルト」への冷ややかな目を持ってしまったといえる。

 今回の賞はグリーンカージャーナル誌とGreencar.comの編集者が選考するもの。米国では2010年秋以降の発売車を2011年モデルと呼ぶことから、ノミネートされたのは2010年中の生産車だ。同賞のファイナリストとなった5台は、「ボルト」以外に、日産「リーフ」、フォード「フィエスタ」、ヒュンダイ「ソナタ・ハイブリッド」、リンカーン「MKZハイブリッド」だった。

 「ボルト」はこれ以前に、「2011年モータートレンド誌・カー・オブ・ザ・イヤー」、「2011年オートモービル誌・カー・オブ・ザ・イヤー」など、米大手自動車雑誌からの表彰を相次ぎ獲得している。

 一般的に考えると、こうした「賞の総なめ現象」は「GM再上場へのご祝儀」に感じられる。だから今回の受賞現場でも米国人自動車業界関係者の間から「あ~、やっぱりね」という声がチラホラ聞こえた。

 では、この「ボルト」、実際のところはどんな車なのだろうか?

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桃田健史 [ジャーナリスト]

日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなど米国レースにレーサーとしても参戦。自動車雑誌に多数の連載を持つほか、「Automotive Technology」誌(日経BP社)でBRICs取材、日本テレビでレース中継番組の解説などを務める。1962年生まれ。著書「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」好評発売中


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