
日産自動車が神奈川県の追浜工場での車両生産を2027年度末に終了することを正式に発表した。日産九州工場に生産を移管する。また、子会社・日産車体の湘南工場も26年度末までに生産終了する。カルロス・ゴーン体制から続いた過剰な生産体制という「負の遺産」をある程度処理するめどを付けたといえる。日産の経営再建は「次なる焦点」に移る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
九州への生産移管で、サプライチェーン再構築に
失敗すれば大きなリスクに
「リーダーとして、こんなことはやりたいと思う人はいないだろう。ただ、残念なことにやらなければならないのだ。将来の日産の成長、他の従業員の持続可能性のために」。日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長は、自身が下した国内2工場のリストラについて力を込めて語った。
日産は、7月15日、神奈川県横須賀市にある追浜工場での車両生産を、2027年度末までに終了をすると正式に発表した。追浜工場で生産する「ノート」「ノートオーラ」や、今後生産予定だった小型SUVの新型「キックス」は、段階的に日産自動車九州に生産を移管する。
また、子会社日産車体の湘南工場(同県平塚市)も26年度末までに生産終了する。
一般的に、自動車業界における損益分岐点の稼働率は、80%程度とされる。日産の24年度の国内工場稼働率は平均60%程度、追浜工場に至っては40%程度と低水準であった。カルロス・ゴーン体制下から続いた「過剰な生産体制」という負の遺産に、ようやくメスを入れることができた。国内の工場再編により生産コストを15%削減できる見込みで、日産九州工場の稼働率は100%に達する。
追浜工場に勤務する約2400人の雇用については、今後従業員や労働組合と協議する。ある日産OBは、「かつての座間工場や村山工場の閉鎖時の経験を踏まえれば、時間軸も比較的長いため、そこまで苦労しないだろう。地域経済面でいっても、当時は『座間や村山の町が消える』と言われたが実際そうはなっていない」と話す。
とはいえ、地域経済への影響は小さくない。その代償に少しでも報いるためにも、日産は是が非でも経営再建を成し遂げなければならない。日産の経営面で言えば、過剰な生産能力の是正にめどを付けた今、次なる焦点に移る。次ページでは、サプライヤーを含む業界関係者が気をもむ「次なる課題」を明らかにする。