「7ナンバー」を冠した新型スマホを投入した、韓国サムスン電子と米アップル。市場シェアが伸び悩む中、起死回生を狙っているが、その道程には濃い霧がかかり始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
Photo:REUTERS/アフロ
「今すぐ端末の電源を切って、以前の携帯電話を使用してください」
9月10日、韓国サムスン電子は、新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」について、即座に利用を中止するよう、米国、中国など10カ国・地域に一斉に勧告した。
8月19日に発売してから2週間余りで、韓国や英国をはじめ世界各地でスマホの電池部分から発火、爆発という深刻な事故の報告が相次いだためだ。
当初、今回の事故でサムスン自身が負う“やけど”は、すぐに回復するかと思われたが、足元ではさらに悪化しているように見える。なぜか。要因は大きく二つある。
一つは、初動対応のミスだ。サムスンは9月初旬、充電中にノート7が発火したことを、利用者がツイッターなどに画像付きで投稿し始めたことを受け、一時的に出荷を止めた。
しかし、その時点で各国・地域の関係当局に、正式なリコール(製品の不具合に伴う回収・無償修理)の手続きを取らず、単なる「自主回収」という対応にとどめてしまったのだ。
すでに出荷した250万台に対して、発火などの報告事例が「計35件と全体の割合でいえば小さかった」(サムスン関係者)との判断があったようだ。
そのため、各国の航空当局が機内での使用・充電を禁止する勧告を出し、米消費者製品安全委員会がしびれを切らしたように、サムスンに先んじて、使用中止を求めるといった事態を招いた。
サムスンは、250万台の返品・交換などに伴う費用について「莫大」(高東真(コ・ドンジン)・無線事業部長)と述べるにとどめているが、販売の機会損失を含めた影響額は、1000億円前後に上るという試算もある。
やけどが悪化しているもう一つの要因は、ここにきてサムスン製品の信頼性が揺らぎ始めたことだ。
サムスンは今回の発火事故などの原因は、スマホの電池部分(セル)にあるとしている。
電池を供給しているのは、グループ会社のサムスンSDIと、TDKグループのアンプレックステクノロジー(ATL)の2社とされ、供給量の約7割を占めるSDI製の電池に問題があったというのが、これまでの見方だった。
ところが今、業界関係者の間ではノート7本体側にも問題があったのではないかという話題で、持ち切りになっている。