営業、製造、研究開発、サービス、マーケティング…、あらゆる企業の活動においてデータの活用なくして効率化、最適化は図れない。それどころか、競争を勝ち抜くにあたってデータを活用できるかが死活問題としてのしかかっている。デジタルトランスフォーメーションともいわれるトレンドだ。そのデータ分析の基盤技術を提供するテラデータのユーザー会が9月11日から5日間、米アトランタで開催したカンファレンス「Teradata PARTNERS 2016」で、データ活用の現在、そして将来について探った。
データから自社ビジネスの
知らなかった事実がわかる
世界最大の海運企業マースク(Maersk)は、世界の約15%のGDPを運んでいるといわれる巨大なコンテナ事業を持つ。同社の船は15分ごとに世界のどこかの港に寄港しており、欧州とアジアの間で400万TEU(コンテナの単位で、長さ20フィートのISOコンテナ)を運んだ。古くからテラデータの顧客だが、ある時テラデータのチームと共同で空(から)のコンテナがどのぐらい船に積まれて移動しているのかを調べることになった。空のコンテナを運ぶことのコストは年間10億ドルとも言われている。たとえばアジアと欧州間では アジアから運ぶ量と欧州からの量が大きく異なる。ある程度不可避のコストではあるが、無駄はないのか。
「結果は誰もを驚かせた。実に多数のコンテナが空のまま世界中の転々としていただけでなく、何年もの間空のまま世界の海を渡り続けていたものもあった」とテラデータのピーター・ミケルセン(Peter Mikkelsen)氏(インターナショナル・リージョン、エクゼクティブ・バイス・プレジデント)は言う。創業112年、業界の大手でありこのビジネスを知り尽くしたと思っていた老舗企業が、データ分析により自社の新しい事実を知った瞬間だ。ほんの1つであっても、貴重な船の面積を占めているのだ。 幹部は早速、空のコンテナの削減に取り組むことになった。
マースクのように、データから企業は自社の新しい事実を知ることができる。蓄積しているデータが少ないベンチャー企業でも、公開されているデータを組み合わせることで差別化されたデジタルサービスを構築できる。
このような効果を狙って、企業はデータを日々蓄積している。人間の活動がデジタルへシフトしているだけでなく、IoTーーインターネットにつながった数億、数十億ものモノがデータを生成する時代が始まりつつある。2015年モバイルトラフィックは74%増加し、2020年には8倍に膨れ上がると予想されている。