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一流の睡眠
【第16回】 2016年9月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
裴英洙 [医師・MBA/ハイズ株式会社代表取締役社長]

医学的データから見る「午後2時~4時の眠気」の撃退法

 ランチ後の睡魔は、誰にでも襲いかかり、仕事のパフォーマンスを極端に落とす難敵。知識ゼロで正面から戦おうとするのは、時間と体力のムダです。 

 ここでは、「昼寝」以外で、効果的に睡魔を撃退するいくつかの方法を、サクッとお伝えします。

(本連載は、医師×MBA×経営者のトリプルホルダーで、医師とビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、発売まもなく増刷を重ねる新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えるものです)

寝不足の恐ろしさがわかる2つのアンケート

 睡眠不足は、「事故」に直結します。みなさんにぜひ、知っておいていただきたい2つの研究結果を紹介します。

 まずは、船舶の船員約8000名に対して行なった睡眠と事故についての研究です。船の事故は、転覆や遭難、座礁、タンカーの原油流出など大惨事につながる可能性があります。

 彼らの中に、「眠気が原因で重大事故の1歩手前の状況になったことが、月に2回以上ある」と答えた人が5.5%もいたのです。単純計算で、100人の船員のうち、約6人が眠気のために危うく事故を起こしそうになったことが月に2回もあったということになります。

 2つめは、運転免許試験場における免許証の更新者数千人に対してのアンケートです。「運転中に眠くなることがある」と答えた人は40.4%で、「居眠り運転をしたことがある」と答えた人は20.3%、「居眠り運転により事故を起こしそうになった、または実際に事故を起こしたことがある」と回答した人は10.4%という結果でした。

 運転する人の約4割が眠気を感じていて、実際に危険な目にあった人が1割もいることがわかります。

 1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、さらに、その背景には300の異常事態が存在するという「ハインリッヒの法則」が有名ですが、この法則を証明する研究結果だと言えるでしょう。

午後の2時~4時は「魔の時間帯」

 さて、次に、オフィスで働くビジネスパーソンにも直結するデータを紹介します。次の図は、居眠り事故の発生率を時刻別に示したものです。実線が居眠り運転事故、点線が運転事故全体を示しています。

 運転事故は、誰もが予想できるように、朝と夕方のラッシュ時に多いようです。しかし、居眠り事故は、ラッシュ時ではなく、交通量の少ない時間帯に多発していることがわかります。1つは夜半から早朝にかけて、そしてもう1つは午後2時から4時という、2つのピークが見て取れます。海外も同様の結果が報告されています。

 この時間帯に眠くなるメカニズムと、代表的な対処法については拙著『一流の睡眠』に詳しく解説していますが、午後2時から4時の間は、人間の生体リズムと、ランチ後のホルモンバランスというダブルパンチで、避けがたく眠気に襲われる時間帯なのです。

 さて、それでは、この「魔の時間帯」にできる対策を考えてみましょう。

眠気を積極的に撃退する方法

 当日の朝や前日の夜に、1日の仕事を事前にスケジューリングしている人も多いかと思います。その仕事の割り振りの判断基準に「眠さ」を加えると、より効率的に仕事を進めることができます。

 あなたの1日の仕事を、(1)頭を使わない単純作業、(2)頭をフル回転させるようなエキサイティングな業務、の2つに分類してみてください。

 午後2時~4時に(1)の単純作業を持ってくると、日中の眠気を誘う要因がすべて揃った状態とも言えますから、パフォーマンスの面では非効率なスケジューリングだと言えるわけです。

 この時間帯には、意識的に移動を加えた仕事を配分するようにしましょう。パソコンのディスプレイを見たり、資料を読み込んだり、インプットに偏った業務は眠気を誘います

 もし、あなたがリーダーの立場にあるなら、できる限りこの時間帯に単調な会議を設定することは避けてください。どうしてもこの時間帯に会議をするなら、メンバーが緊張感を持って参加できるように、積極的に意見を促すなどの「工夫」をしてください

「会社外の打ち合わせ」が◎な理由

 私は、『一流の睡眠』の中で、眠気を撃退するベストな方法として「昼寝」を挙げています。とはいっても、今の日本では、「昼寝などできる環境にはない!」という方も多いでしょう。

 昼寝以外の睡魔撃退策のキモは、体や口を動かしながらアウトプットすることです。

 まずは意識的に動くことで、少なくとも、デスクに座っているよりはずっと、眠気は解消されます。

・コピーを取りにいく
・エレベーターを使わずに階段でフロア移動する
・思い切って立って作業する
 など

 さらに「アウトプット」の視点を加えると、さらに効果的でしょう。たとえば、次のような方法です。

・営業に出るなど、社外の打ち合わせを入れる
・他部署にヒアリングに行く
・上司や役員など緊張感をもって接する人と会話する
 など

(参考資料)
・「操船者の眠気による船舶の事故及びインシデントの背景要因に関する研究」漆谷伸介、人間工学、2010年

・「運転免許保有者の居眠り運転に関連する要因についての検討」、駒田陽子、日本公衆衛生雑誌、2010年

・「科学警察研究所交通安全教室研究資料」『睡眠学 眠りの科学・医歯薬学・社会学』高橋清久編、じほう、2003年

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裴英洙 [医師・MBA/ハイズ株式会社代表取締役社長]

はい・えいしゅ/医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。

 

1972年奈良県生まれ。 金沢大学医学部卒業、金沢大学大学院医学研究科修了。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科(現・心肺・総合外科)に入局し、大学病院や基幹病院を中心に、主に胸部外科(肺がん、心臓病など)に従事し、日々手術に明け暮れる。その後、金沢大学大学院に入学し、外科病理学を専攻し医学博士を取得。さらに、病理専門医を取得し、市中病院にて病理医として病気の最終診断にかかわり、年間1万件以上の重大疾病の診断をこなす。

また、医師として働きつつ慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)にて医療政策・病院経営の第一人者の田中滋教授に師事。同ビジネス・スクールを首席で修了。フランスグランゼコールESSEC大学院交換留学。ビジネス・スクール在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。多数の医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザー業務などを行なっている。 現在も医師として臨床業務をこなしつつ、臨床の最前線からのニーズを医療機関経営に活かすハンズオン型支援を行なう。

著書に『10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術』『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』(ダイヤモンド社)、『医療職が部下を持ったら読む本』(日経BP社)などがある。

 


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