右の図で説明しよう。実勢レートが1ドル=120円のときに、輸入企業X社が「1ドル当たり100円で毎月10万ドルを購入する権利」を取得すれば、実際は1200万円必要なのに、1000万円ですむ。つまり、毎月200万円の利益を得られるのだ。

 だが、うまい話には裏がある。実勢レートが1ドル=80円と、行使価格を割り込んだときはどうか。X社は毎月600万円もの損失を被る契約になっている。詳しい説明は省略するが、X社は「銀行から10万ドル買う権利」を取得する見返りに、「X社に30万ドルを売る権利」を銀行へ渡しているのである。

 本来、X社は円高になれば権利を行使せず、市場で売買することで円高のメリットを受けられる。ところが実際には、メリットどころか、多額の損失を被るハイリスク商品だ。

 さらに「ギャップ」「ノックアウト」などと呼ばれる銀行側に有利な契約を結ばされるケースも多く、企業が受け取る利益は限定され、損失は拡大する。契約期間は5~10年と長く、解約の際には、契約内容や為替レートにもよるが、おおむね数千万~数億円もの違約金が必要となる。これが手数料ゼロのカラクリなのである。

 一方、銀行は通貨オプション契約の反対売買を市場で行い、為替リスクを回避する。契約には取得コストにマージンを乗せた行使価格を設定することで、利益を先食いできる。

 みずほによれば、通貨オプションの販売のピークは04~05年頃。07年以降は円高が進んだことで販売件数は減少し、特に08年秋のリーマンショック以降は大幅に減ったという。

 販売のピーク時は、政府による「金融再生プログラム」で各銀行が不良債権処理に追われていた時期に当たる。融資が厳しいなかで、なんとか収入を上げようと通貨オプションに傾注したと見られる。