政府は8月に行われた内閣改造で初めて「働き方改革担当大臣」を設け、9月16日には8人の関係閣僚と15人の有識者をメンバーとする「働き方改革実現会議」を設置して議論を本格化させる構えをみせた。今回は働き方の改革について考えてみたい。

「骨折り損のくたびれ儲け」を続けてはいけない

日本から残業をなくし生産性を上げる3つの方法

 わが国では長時間労働の弊害が指摘されて久しいものがあるが、まず具体的にいくつかの数値を見てみよう。何事であれ、人口が一貫して増え続け、世界一の産油国でもある広大な大国アメリカと比較してもあまり意味はないと考えるので、人口や国土がある程度似通ったドイツやフランスと比べてみると、次表の通りとなる。どちらがいいかは一目瞭然だ。

日本から残業をなくし生産性を上げる3つの方法

 これでは誰が見ても、わが国は「骨折り損のくたびれ儲け」ではないか。この状態を続けたら社会が疲弊するだけだと考える。働き方の改革とは、即ち、少子高齢化や成熟経済の先進国であるドイツやフランスのように短い労働時間で生産性を上げ、相対的に高い成長を目指すことなのだ。

 ある著名なブロガーが次のようなことを話していた。

「皆さん、お父さんやお母さんに尋ねてみてください。『どうして、お父さんやお母さんの時代は高度成長したの?』『それはね、お父さんやお母さんが一所懸命働いたからだよ』きっとそういう答えが返ってくるでしょう。ちがいます。皆さんがお父さんやお母さんと同様に働いたとしても絶対にわが国が高度成長することはありません。お父さんやお母さんの時代は、高度成長する外的条件が整っていただけなのです」

 その通りだと思う。では、その外的条件とは一体何だったのか。

冷戦、キャッチアップモデル、人口の増加という3つの条件

 それは、冷戦、キャッチアップモデル、人口の増加という3条件に収束させることができる。

1.冷戦

 世界地図を拡げ、ロシアや中国を下方に置いてみると、彼らが太平洋に出ようとした時、日本列島がいかに邪魔になるかが一目で分かる。日本は不沈空母として地政学上絶好の位置にあり、だからアメリカは日本を大切にしたのである。戦後の日本は繊維、鉄鋼、自動車、半導体とアメリカというお父さんの脛を次々にかじりつくして経済成長を遂げた。それでもなんとかアメリカが許容してくれたのは、冷戦があったからだ。冷戦はとうの昔に終わってしまった。