経営×総務

残業を常態化する原因は
社員の側にある

 厚生労働省が示している「時間外労働の限度に関する基準」によれば、残業時間の限度は、通常は1ヵ月45時間であり、例外的に年6回まで通常の25%から35%に割増賃金率を高める前提で、月60時間まで認められている。しかし、1日平均2~3時間程度の残業をしている方は、少なくないことが実体ではないだろうか。

残業がはびこる原因は企業側の姿勢にありという論調は根強いが、社員側にも「残業をしたい理由」がいくつも存在する

 いわゆる残業過多の問題は、健康被害防止のために、経営者に管理義務を課し、労働者を擁護する観点から取り上げられることがほとんどである。

 同省の「過重労働による健康障害防止のための総合対策」では、残業時間が月80時間を越えた場合の健康管理や長時間労働防止策を、企業に義務付けている。メディアで取り上げられる残業問題も、ほとんどが労働者擁護の視点に立っている。

 しかし、残業を継続的にしている、いわゆる残業常習者の本音を聞いてみると、社員の側に、残業を常習化させるマインドが根強く浸透している実態が浮かび上がってくる。後述するように、経営者側に全く問題がなく、むしろ、社員の側に残業を常態化する根本的な原因があるというケースも少なくないのだ。

 このように申し上げると、「残業が恒常的な状態になっていることは、社員に問題があると言うのか!!経営側の問題ではないか!!」「いわゆるブラック企業の経営者に責任がないというのか」という声が聞こえてきそうだが、私には、経営側にも努力すべき点はあるものの、社員の側に、より深刻な問題があると思えてならないのだ。

 そもそも、社員の側に深刻な問題があるのではないか考え始めたきっかけは、外資系輸入販売会社に人事部長として着任して間もなく、人事部のメンバーへ、ひとつの提案をした際のことだ。

 「個人にとっても会社にとっても、体が資本なので、健康維持のために残業はしないことを前提に、9時から18時の勤務時間内でできることをやるというスタンスにしよう。相談しながら、優先順位をつけた上で業務実施し、できなかった業務は先送りしたり、やらないという判断を私がして、関連部とも話をつけます」という方針だ。まさに、厚生労働省の健康管理義務と残業時間管理のガイドラインに従ったものである。しかし、この提案をしたところ、次々と反対の声が上がったのだ。

 「残業しないで、業務が完了できるはずがない」「先送りしたところで翌日の業務があるので、業務が次々と山積みになるだけだ」…。「正直に申し上げて、時間内に終わらせる自信がない」」という真情を語ってくれるメンバーも出てきた。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


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