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山崎元のマネー経済の歩き方

買値へのこだわりは克服できるか

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第156回】 2010年12月7日
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 個別の株式でも、投資信託でも、投資家は自分がそれをいくらで買ったかという買値を忘れることはほとんどない。これは、素人はもちろん、運用のプロでも同じだ。

 運用の意思決定を反省するという意味で買値を忘れずにいて、その時点でその投資が正しかったのかどうかを反省する目的なら、買値を覚えていることは望ましいことだ。しかし、多くの場合、買値は、昔の反省よりも、現在の価格(株価や基準価額)との比較対象として意識に残り、一つの「こだわり」として、投資に影響する。

 「まあ、儲かっているからいいや」「儲かっているうちに、手仕舞っておこう」といった心理によって不必要に早売りしたり、逆に、「あと○○円戻ったら損がなくなるので売ろう」「××円まで戻らないので、今は売れない(売りたくない)」といった理由で、売るべきものが売れなくなったりといった具合に、運用に悪影響が及ぶ。

 一般投資家の話を聞くと、自分の買値を下回る価格で保有資産を売却することは、精神的にそうとうの困難を伴うようだ。これは、アクティブファンドを卒業して、インデックスファンドへの投資を中心にしているようなスマートな投資家でもそうらしい。

 しかし、投資で考慮すべきは「現在の価格」だけだ。これが真の価値よりも高いと思えば売り、安いと思えば買い、適正の範囲だと思えば持ち続けるというのが基本動作であり守るべき大原則だ。

 付け加えるなら、自分の買値にこだわることは、自分の買値が将来の価格の動きに影響する場合にのみ意味を持つ。つまり、自分の買値との関係で売り買いを左右させるということは、自分の買値が価格に影響する材料であるかのように振る舞う自意識過剰の恥ずかしい行為だ。意味を考えるなら、結果論にすぎないたまたまの儲けを実力と勘違いして自慢するのと同じくらい恥ずかしいことだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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