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岸博幸のクリエイティブ国富論

アマゾンのウィキリークス排除が予感させる
流通独占を喪失したメディアの悲しき末路
――ネット企業が握るジャーナリズムの生殺与奪権

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第118回】 2010年12月10日
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 ウィキリークスを巡っては、創設者のジュリアン・アサンジ氏が英国で逮捕されるなど、未だに騒ぎが続いていますが、今回の事件を通じてネットの致命的な問題が明らかになりました。

 それは、ウィキリークス以外のプレイヤーの行動からも、ネットはまだメディアと言うには甚だ不完全な存在であるということです。

ウィキリークスよりアマゾンが問題

 ウィキリークスはアマゾンのクラウドコンピューティング・サービスを利用して(=アマゾンのサーバを借りて)、ネット上で情報を提供していました。そのアマゾンは、騒ぎが大きくなった先週水曜(12月1日)の時点で、ウィキリークスへのサービスの提供を停止しました。

 ウィキリークスがこれだけ大きな問題を引き起こしたのですから、一見もっともな対応に見えます。しかし、実はとんでもないひどい対応をしたのです。二つの大きな問題があると言わざるを得ません。

 サービス停止の理由は、ウィキリークスがアマゾンとの契約に違反する行為を行なったためです。米国での報道によると、「利用者は、コンテンツに関するすべての権利問題をクリアしており、またコンテンツの利用が他の人や組織に危害を与えるものであってはならない」という趣旨の契約条項に違反した、とアマゾンは主張しているようです。

 しかし、今や世界中の多くのマスメディア(テレビ局、新聞社、雑誌社)がネット対応でのコスト削減のため、ウィキリークスと同様にクラウドサービスを利用しています。

 そして、それらマスメディアは、とりわけ特ダネ的なニュースを発信する場合、その情報元はたいてい政府や企業の内部文書です。当然、マスメディアの側はそれらの文書に関する権利は何ら持っておらず、その意味でウィキリークスの今回の暴露と本質的には同じです。強いて言えば暴露する文書の量が違い過ぎるだけです。

 そう考えると、問題点が明らかになるのではないでしょうか。

 第一の問題は、もしアマゾンが本当に契約条項違反を理由にウィキリークスへのサービス提供を停止したのなら、すべてのマスメディアのクライアントに対して同様の対応をすべきです。でも、そうした首尾一貫した対応は取らないでしょう。本音の理由は、ウィキリークスの騒ぎに巻き込まれたくないだけのはずだからです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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