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本川裕の社会実情データ・エッセイ

「統計」の醍醐味を古典文学のキーワード分析で実感する

本川 裕 [統計データ分析家]
【第11回】 2016年10月12日
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孔子の『論語』に出てくるキーワードを分析することで、意外な事実が発見できた

「数え上げること」で
真実を観察する統計の醍醐味

 統計とは数え上げることである。なぜ数え上げなければならないかと言うと、「統治の必要」からと「真実を観察するため」という2つの理由がある。

 統治の必要とは、例えば、豊臣秀吉が全国的に行ったように、大名の領地の石高を検地で正しく数え上げ、これを元にして、大名への出兵要請、大名の格付けを行う石高制という政治制度をつくるというようなことである。統計の発生を考えるとこちらの理由の方が先である。現代でも、形を変えて統治の手段としての側面は生きているが、最近は、観察手段としての統計の方が大きくクローズアップされている。

 統計がどうして観察の手段として有用かというと、小さいものを観察するためには顕微鏡が必要であり、遠くのものを観察するためには望遠鏡が必要なのと同様に、たくさんのものを観察するためには数え上げるしかないからである。数え上げる前の漠然とした印象が数え上げた結果で訂正される場合が多いため、たくさんのものが多くなった現代では、統計は真実へ到達する重要な観察手段となっているのである。

 統計による観察には、主に、「意外」、「発見」、「確認」という3つの働きがあると思う。

 「意外」は、数え上げてみると、こうであるに違いないと思い込んでいたのと異なる結果になったということである。この連載の前回で、貧困意識を抱いている人が思いがけず減っているという世論調査の結果を紹介したが、数え上げてみないとやはり分からなかった意外な事実なのである。

 「発見」は、数え上げてみると考えてもいなかった新事実に気がつくということである。この連載の第5回で、2015年の国勢調査では前回と比べ「営業・販売事務職」が職業中分類で最も増えていることを紹介した。新しい時代の潮流は、案外、気がつかないところで進行している可能性があるのである。

 「確認」は、知っていることでも数え上げてみないと、その程度が分からないということである。この連載の前々回で、日本における高齢化の程度について国際比較を示したが、高齢化が日本では非常に進んでいることは知っていてもこんなにも世界との比較で群を抜いているということは分からなかったのである。思っていた程度どおりだということが分かる場合もあるから「確認」なのである。

 今回は、古典作品のキーワードを数え上げるという、これまた統計の一種というべきものについて、これら、「意外」、「発見」、「確認」の3つの働きを、この順番に紹介したい。前二者は、学者の研究成果を引用し、最後は、私が作成したオリジナルなランキングを紹介する。

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本川 裕 [統計データ分析家]

統計データ分析家。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師。1951年生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業。同大学院単位取得済修了。(財)国民経済研究協会研究部長、常務理事を歴任。現在、アルファ社会科学(株)主席研究員。インターネット上で「社会実情データ図録」サイトを主宰。

 


本川裕の社会実情データ・エッセイ

本連載では、統計データの動きを独自に整理、グラフ化することによって、意外な社会の動きやわが国の状況を追って行きたいと考えている。もっとも堅苦しいものではなく、趣味的な個人の嗜好も含めたざっくばらんなものとしたい。体系的な思想というよりエッセイ形式で人間習俗(モラル)を観察したモラリストの伝統に連なれればと考え、連載タイトルにエッセイという用語を含めた。

 

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