ベストセラー『統計学が最強の学問である』『統計学が最強の学問である[実践編]』『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』の著者・西内啓氏が、識者をゲストに迎えて統計学をテーマに語り合うシリーズ対談企画。前統計学会会長の竹村彰通先生を迎えた対談の第4回では、統計家自身を守る存在でもある「統計家の行動基準」を紹介します。 (構成:畑中隆)(この対談は、2014年に行なわれたものです)
「センス」とはデータ重視の価値観のこと
竹村 私が日本人にもっとも欠けていて問題だと思うのは、数学や統計の能力ではなく、統計的なセンスの欠如です。
西内 はい、わかります。
竹村 会社や役所での日本人の意思決定のプロセスを見ていると、部長のような立場の高い人の「ツルの一声」で決まっていくことが多いですよね。それもデータにもとづいて説得するならともかく、これまでの経験とか勘に頼ったアバウトなものが多いようです。やはり、もう少しデータをもとに考えて決定するとか、あるいは意思決定をする際には、必ず何らかのデータ的根拠を持って決める、そういった仕事のやり方を根づかせていく必要があると思います。
アメリカの場合、さまざまな国から集まっていますから、みんなが英語を得意というわけではありません。そこではデータこそ「共通言語」になる。日本ではデータよりも経験とか、情熱とか、そのような情緒的な面が強すぎて、データ的な根拠をもとに決断していこうとする姿がなさすぎるように思います。
――たしかに「空気」で決める状況はなかなか変わっていません。
竹村 国際的な競争面で考えると、少なくともいまの意思決定の方法を変えていかないと、日本企業は今後、ますます不利になります。
西内 製造業の経営層の方に会うと、「若いころはオペレーションズ・リサーチをやっていた」という工学部出身の人もかなりいます。私はそういう人に、「もっと意思決定の場でガンガン発言してくださいよ!」とお願いしています。彼らなら、何かを決める場では数字で考える、データを根拠に決めていくという方法を身に付けていると思うからです。