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China Report 中国は今

日系企業のベトナム人社員「技術・日本語・熱意」で架け橋に

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第219回】 2016年10月13日
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「自分には日本人にはない経験もあります」と語るホアンさん(左)

 東京都足立区江北で進む都営住宅の建て替え事業、その施工現場では杭打機を組み立てる作業が行われていた。そこでワイヤーを通す作業を行っていたのが、ベトナム出身のグェン・ミン・ホアンさん(29歳)である。今年4月、杭基礎工事を専門に行うオムテック(本社:東京都豊島区)で幹部候補生として採用されたベトナム人だ。

 「ホアン君はだいぶ慣れてきたようだなあ」

 その仕事ぶりを見て、この道30年のベテラン職員が感嘆する。かつて不法労働者の姿も見られた建設現場は一種の“外国人アレルギー”が残る世界でもある。そんな世界で「外国人に現場管理者が務まるのか」という風当りもなかったとはいえない。だが、ホアンさんは今ではすっかり仲間たちと打ち解けている。

 「外国人もいろいろ経験したが、ホアン君は常に笑顔が絶えない。第一、一所懸命さが伝わってくるんですよ」(同)

「3年後には独立して
現地で起業してほしい」

 ホアンさんは、ベトナムの交通運輸大学で高速道路の設計を学んだ。「在学中に、ベトナムに日本のODAで建設した橋梁があることを知り、その技術の高さに惚れ込みました」(ホアンさん)と、卒業後は日本留学を決意。日本では日本語学校に通い、日本語能力検定N3を取得した。かろうじて日本語でコミュニケーションができるホアンさんを見込んだのが、オムテック代表取締役社長の後藤泰博氏(65歳)だ。

 「顔を見れば真面目さがすぐにわかりました。ヘルメットをかぶれば日本人と変わりません。彼ならすぐに溶け込めると直感しました」(同)

 面接時、ホアンさんは過酷な労働条件にも「ノー」といわなかった。当時、完璧とはいえない日本語だったが、わからない言葉はすべてメモを取り、徹底して意味を調べた。そんな「とことんやる気」を日本企業が買ったのだ。

 ホアンさんはこう抱負を語っている。

 「『一番いいやり方』はほかにもあると思います。また、自分には日本人にはない経験もあります。仕事のためになる最良の方法を編み出していきたいと考えています」

 父親は造船エンジニア、妹は医者を志す大学生、真面目で勤勉なのはグェン家の血でもある。さらにその上を目指すホアンさんは「日本の施工管理のその先」を見つめている。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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