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ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。
【第16回】 2016年10月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
原田まりる [作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター]

ニーチェの次は、ハイデガーが来る?
【原田まりる×飲茶×堀田純司(後編)】

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17歳の女子高生、アリサがひょんなことから現代に降り立った哲学者・ニーチェと出会い、人生について、将来について、そして「哲学すること」について学び、成長していくという異色の小説『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』。その著者であり、哲学ナビゲーターとしても活躍する原田まりる氏と、『史上最強の哲学入門』著者の飲茶氏、そして『僕とツンデレとハイデガー』著者の堀田純司氏という3名の“哲学作家”の鼎談が実現。それぞれの著書について、そして哲学の魅力について、ざっくばらんに語っていただいた。今回は鼎談の後編です(構成:伊藤理子 撮影・石郷友仁)

読者の心を揺さぶり、
哲学者の言葉を記憶させるにはどうすればいいか?

『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』著者で、哲学ナビゲーターとしても活躍する原田まりる氏(中央)と、『史上最強の哲学入門』著者の飲茶氏(右)、そして『僕とツンデレとハイデガー』著者の堀田純司氏(左)

原田 飲茶さんの本は、友達から勧められたんですよ。

飲茶 そうなんですか。

原田 その友人は別に哲学好きではなかったんですが、「こんな面白い本がある」と言われたのがきっかけなんです。すると、哲学者の考え方だけでなく、それぞれのキャラクターが前面に出ていて、その人の人となりやリアルな生活などが紹介されていて、ほかの哲学書とは全然違う!と驚きました。

飲茶 哲学入門書を書くときにすごく気を使っているのが、飽きさせないこと。「こんな哲学者がいて、こんなことを言いました。それはこういう意味です」を羅列するだけだと、読者は多分飽きちゃうし、読者のハートは揺さぶれない。

 まずこの哲学者がいつの時代にどういう場所で生まれて、どんな環境の中で育って、そこで悩んだり考えたりして、ある日ハッと気づいて、すべてをひっくり返すような考え方をポンと生み出した。それがこれなんです!と言ったほうが、読者の納得感が高いし興味をひかれるだろうと思ったんです。

 そのため、本を書く前には哲学者の歴史本などを集めて下調べして、どういう背景を紹介すればこの哲学者の哲学が読者の胸に刺さるだろうとずっと考える。これって、映画や漫画のストーリーを考えるのとまったく一緒で。

原田 そこがわかりやすいんですよね。一般的な哲学入門書を読んでも、結局名前と考え方が関連づかないということって多いと思うんですけれど、飲茶さんの本ではそれがないんですよね。ほかの方と抽出される部分も違うというか。

飲茶 どうすれば読者の胸を打つ読み物が書けるかと言う観点が第一にあって、でも、話がつながるようにしなければならない。ある意味、パズルゲームみたいな感覚で、ストーリーをうまく組み上げていくイメージでしょうか。

堀田 確かに。

飲茶 読者に「飲茶さんの本はわかりやすい」と言われるのはとても嬉しいんですけれど、最近、今回のように哲学入門書を書いている作家さんたちと会って話すようになって、「本を書き上げるまでの過程」を共有できるのが嬉しくて。こんな工夫をして、これだけ頑張ったという努力を分かち合えるでしょう?

堀田 そういう思いを分かち合える人って、すごく限られますものね。

飲茶 ですよね。「デカルトから始めなきゃいけないの、めんどくさくね?」みたいな(笑)

原田 ほかの哲学入門書だと絶対書かれる流れってあるじゃないですか。例えば3ページ目ぐらいにタレスが出てくるみたいな。

飲茶 デカルトから始めるか、やっぱり古代ギリシャか?

堀田 存在論から入るとその二択になってしまいますよね。これがロボットの話になると、絶対カレル・チャペックの小説から入るのと似ています。

原田 堀田さんの場合は、どんなこだわりを?

堀田 ネットって、自分の見たいものだけを見るという方向で収斂しやすいツールなので、今の世の中って「自分が思う真実だけが真実なんだ」という考え方をする人が多くなったと感じるんです。でも本来、価値観は多様で、答えはひとつではない。僕、ネットの炎上って、他の価値観が存在することを知らずに、不用意に接触してしまった時に起こると思うんです。

原田 確かに。

堀田 ただ、その気持ちもわかります。世界は複雑で、答えは見えづらい。そもそも正解などどこにもなくて、選択肢は「悪い」「すごく悪い」「もっと悪い」しかないのかもしれない。こういう時代だからこそ、「これが答えだ。かんたんだ」という人のほうが受けるし、ドナルド・トランプのように「俺が答えを知っている」という人が現れる。正直、出版企画としてもそのほうが、売れるかもしれない。

 でも世界の複雑さに耐えかねて、かんたんな解答に走るよりは、多様さを多様なまま受け入れたい。そういうことを考えていました。福井晴敏さんの『ガンダムUC』などは、どんな過去があっても人は乗り越えて、わかりあえるというメッセージがありますよね。あのような作品を見ると、勇気が出ます。

原田 元編集者ならではの観点ですね。

堀田 歴史って面白いなと思うんですけれど、今、ものすごいテクノロジーに囲まれて未来に生きているような気がする一方で、たとえばヨーロッパを見ると、民族の大移動が問題になっている。中世がそのまま続いているんですね。

 過去の思想の課題も、そのまま現代に接続されている。ただ、そのままだと広くは読まれないかもしれないものを、現代の実感にアップデートして、お書きになった。僕は原田さんのそうした姿勢から「使命感」みたいなものが伝わってきました。どんなふうに世の中に受け入れられるのか、とても楽しみなんです。きっと答えは一つじゃないんだろうし、いろいろな人の感想を聞いてみたいですね。

原田 ありがとうございます。

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原田まりる(はらだ・まりる) [作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター]

1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、 哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。 著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある。


ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。

17歳の女子高生・児嶋アリサはアルバイトの帰り道、「哲学の道」で哲学者・ニーチェと出会います。哲学のことを何も知らないアリサでしたが、その日をさかいに不思議なことが起こり始めます。キルケゴール、サルトル、ショーペンハウアー、ハイデガーなど、哲学の偉人たちが続々と現代的風貌となって京都に現れ、アリサに、“哲学する“とは何か、を教えていきます。本連載では、話題の小説の中身を試読版としてご紹介します。

 

「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」

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