アジア地域におけるオペレーション改革の
キーワードとして浮上する「CLMVT」

 PwCでは、成長著しい国々におけるクライアントのオペレーションの改革・顧客価値の創出を支援するために「グロースマーケットセンター(GMC)」という機能を持っており、サプライチェーン構築に関するさまざまな支援を行っている。本稿では、近年アジア地域のサプライチェーン改革のトピックとして注目を浴びている「CLMVT」における日本企業のサプライチェーン改革の在り方を考察したい。

CLMVTはASEANの中の
もう1つの経済圏

チャイナプラスワンを超えて<br />――CLMVT時代のサプライチェーンとは三山功(みやま いさお)
PwCコンサルティング合同会社、マネージャー
製造業を中心とした幅広い業種に対し、サプライチェーンマネジメント関連のサービスを提供。特にアセアン地域における自動車関連業界に対するプロジェクト経験が豊富。近年はデジタル技術(3Dプリンター、ドローン、AI等)を応用したサプライチェーン変革手法の開発にも注力

 記事をご覧の皆様は「CLMVT」という言葉をご存じだろうか?これはカンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム・タイの5ヵ国、つまりASEAN諸国の中でも特にタイを中心に地続きになっている地域を指す言葉だ。場合によっては「メコン地域」とも呼ばれている(下の図表1を参照)。

 近年はAEC(ASEAN経済共同体)によるASEAN域内におけるヒト・モノ・カネの動きの加速に世間の耳目が集まっているが、中でも特にタイを中心としたCLMVT諸国においてより顕著にその動きが加速する、と筆者は考えている。

 その流れを象徴するイベントとして、さる2016年6月にバンコクにおいて初のCLMVT フォーラム が開催された。このフォーラムにはASEAN各国より閣僚級が集まり、CLMVT域内における経済的統合、基準及び手続きの調整など、幅広い問題について検討が行われた。

 日本からも駐タイ大使が参加しており、2015年に日本・CLMVT各国の経済大臣会合において採択された「メコン産業開発ビジョン」を中心とした産業支援について講演している。この中では「アジア、さらには世界のバリューチェーンの中核地域」としての発展を目指すこと、そしてこの取り組みによって「2020年までに約200億ドルに相当するGDPの増加を目指すこと」が明記されていた 。

 本稿ではこのようにCLMVT圏が急速に結びつきを強め1つの経済圏として立ち上がってくる“CLMVT時代”において、日本企業がどのような視点でサプライチェーンを再考していくべきかを考察してみたい。

チャイナプラスワンを超えて<br />――CLMVT時代のサプライチェーンとは出所:PwC