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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

本当のフィンテックは今に始まったことではない

「電子記録債権」の進化

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第46回】 2016年10月19日
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 フィンテックについては『決済インフラ入門』(東洋経済新報社)を書き、本連載でも触れ、NHKの論説番組などでも解説してきたが、最近ではフィンテックという言葉を見ても目新しさを感じなくなってきた。金融機関による実証実験や企業間の提携、そして新しい決済インフラの検討を開始、などという記事は継続的に掲載されているが、実用化されたものは少ないのではないか。

 フィンテック(Fintech)とは、Finance(金融)とTechnology(技術)から成る造語である。実は、銀行をはじめとした金融業の発展の一側面は、まさにTechnology(IT)の導入の歴史であり、最近の「いわゆるフィンテック」に限ったことではない。

 実はまさに“リアルなフィンテック”といえるものに「電子記録債権(Electronically Recorded Monetary Claims)」がある。この「電子記録債権」はリアルなニーズの上に立ち、実際に活用されている。これこそまさにフィンテックと呼べるのではないか。

 決済インフラにおいて、改革の一つの流れは、電子化(無券面化)であった。電子記録債権その流れによるもので、いわば「手形の電子化」ともいわれるものである(ちなみに小切手の電子化は「振込」)。

 電子化が進む一因は、e政府の一環で、電子記録債権には印紙税がかからないことがある。もちろん、紛失のリスクもなくなるし、事務も効率化される。さらに、2009年に株式が電子化(無券面化)されたことも、電子化の抵抗感をなくした。電子化に則して手形交換所の数は、80年代後半の800から、最近では200まで減ってきている。

 電子記録債権という名称について、なぜ「電子手形」といわないのかという質問をよく受ける。それは、手形は「手形法」に基づいて取引されており、手形という「紙」の存在が必須だからだ。手形法に基づく新しいインフラは不可能なのである。そのため、新しく「電子記録債権法」(2008年)という新しい法律に基づく、新しい金融債権「電子記録債権」が創設された。従来の手形と同様に、譲渡や割引もでき、しかも分割して実行もできる。

 現在、認可を受けている機関は次の表の5社である。

 全国銀行協会(全銀協)と3メガバンクが認可を受け営業している。今年認可がおりた「Densaiサービス」は全銀協や3メガバンク以外での初の電子債権記録機関であり、そのサービスはかなり進歩している。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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公式サイト:http://www.shukuwa.jp/    
連絡先: info@shukuwa.jp

 


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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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