ユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させたマーケター・森岡毅氏とコルクの佐渡島庸平氏(twitter:@sadycork)の対談、第6回。
勘やセンスに頼りがちなエンターテイメントの世界で、マーケティングをいかに行えばいいのか。二人の対話は続きます。
(文:佐藤智、写真:塩谷淳) →第1回から読む
人間が求める価値は普遍的
森岡 クリエイティブの構造の中でも、江川達也先生が「『ドラえもん』をリアプライして『まじかる☆タルるートくん』を作った」と、あちこちでおっしゃっているんですが、きっと作家のみなさんもそういうのを意識しているんでしょうね。
佐渡島 そうですよね。
森岡 結構人間が求めている価値は、普遍的で、似通っていると私は思うんですよ。時代を超えているんじゃないかって。
佐渡島 はい、そう思います。
森岡 で、その人間が求めている価値を提供する方法は、時代と共に大きく変わっていく。マーケティングの戦略論の「How」は変わるけれど、元々価値を置いているものは、ほとんど変わらない。揺るがないもの。
私は以前P&Gで、世界180ヵ国に商品を売っていたんです。あのときも思っていたんですが、根源的な価値の部分はどの国でも一緒なんですよね。
どこでも家族は大事だと思うし、どの国の人でも成功したいと思う。どういうことが成功かというのは文化によって変わってきますが、人間の根源的な欲求は、結構似ているんですよ。人間社会をまったく知らない魚から見たら、全部そっくりみたいな。もうほとんど同じ。国の差なんて、文化の差なんてあってないようなものです。
そう思うと、共通する価値を追求するのは結構意味があるぞと思ったわけです。人びとが面白いなあと思う、その仕掛けは一体何なのか。多分それを具現化したものが、ブランドなのではないかと私は思うんです。
喜ぶ世界観の構築自体をDNAレベルから解き明かせば、もっと狙ってヒットが出せるようになる。そうすると、世の中の人の笑顔を狙って作れるようになるわけです。クリエイターのみなさんが報われる状態というのを狙って作れるようになるじゃないですか。で、そういうことを仕掛けられる日本人がどんどん出れば、コンテンツの世界で、ハリウッドの商売のうまい人たちに対しても、対等にやりあうことができるのではないかと思うんです。