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ぼくらの仮説が世界をつくる
【第17回】 2016年10月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
佐渡島庸平 [株式会社コルク代表取締役]

【森岡×佐渡島】ハリーポッターの世界観をどう具現化するか【第4回】
USJのスゴ腕マーケターと語る「エンターテイメントにおけるマーケティング」

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 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させたマーケター・森岡毅氏とコルクの佐渡島庸平氏(twitter:@sadycork)の対談、第4回。

 勘やセンスに頼りがちなエンターテイメントの世界で、マーケティングをいかに行えばいいのか。二人の対話は続きます。

(文:佐藤智、写真:塩谷淳) →第1回から読む

見えていないクリエイターの世界をどう広げるか

佐渡島 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)でアトラクションを作るときは、その世界観が深いほうが、来たお客さんが楽しめる度合いも高まりますよね。

森岡 はい、そう思います。

佐渡島 世界観の深さは、お客さんの楽しみとリンクしますよね。

森岡 そうなんですよね。

 J・K・ローリングも設定していなかったことをいっぱい決めていかないとあの世界の広がりは作れないですね。映画で見えている瞬間というのは、彼女の原作を映画にするときに、映画のクリエイターたちが彼女の世界を頭の中でもう一回再構築して画にしています。それでも見えている世界というのは、ある特定のアングルからの特定の画角でしかない。それを立体にするときには、またすごい設定の再定義が必要になります。

 細かな設定をいちいちJ・K・ローリングが考えているわけではないので、それについては結構クリエイターが発想を膨らませているんです。

佐渡島 でも、それをJ・K・ローリングが確認したときに、「違う」ということはならないんですね。

森岡 そうなんですよ。

佐渡島 それが、作家がすごいところだと私は思います。で、その物語が持っている世界観の奥行とかを分析できると強いだろうなと思っているんです。

森岡 そうですね。

佐渡島 その世界観をどのように分析できるのかというのをいつも考えています。

森岡 それは私も永遠の悩みで、結局クリエイターが生み出すものっていうのはクリエイターにしか見えていない部分が大きい。それを僕らプロデューサーは理解していかないといけないんですよね。

佐渡島 そうですね。

森岡 しかし、理解しても、やっぱり理解しきれない部分のほうが多いとも感じます。世界観そのものを完全に解析して把握するということは、未だかつて成功したことが一度もない。それには、私もすごく課題を感じています。それができたら、もうちょっとクリエイターを助けられるというか、一緒に世界観を大きく作っていけると思うんですけどね。

佐渡島 はい、まったくその通りですね。

森岡 私にわかるのは、作家が何を信じて、何を書きたいかということ。そして、それぞれのキャラクターのパーソナリティなどですね。結局、目に見えるものしか私にはわからないんです。

 ただ、エッセンスの一番重要な「消費者にとっても面白いのか」っていうところだけは、プロデューサーのほうがよくわかると思っています。むしろ、クリエイターよりもわかっている部分。クリエイターは、あくまで自分の描きたいことを描いているので。

『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』(森岡毅・今西 聖貴/KADOKAWA)

佐渡島 うん、そう思います。

森岡 クリエイターの描きたいことをわかってあげた上で、世の中の反応がわかるのがプロデューサー。私も、自著『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』『確率思考の戦略論』を書きながら、ちょっとだけクリエイターの世界を覗くじゃないですか。しかし、クリエイターの側から見えちゃいけない世界っていうのが、やっぱりあるんだろうなと思いました。

 そうすると逆に、私たちプロデュース業の意味はあるんだなあと思えるんです。自分の書籍を書いている中で、自分は根からのプロデューサー畑の人間だなって、痛感しましたね。一方で、クリエイターの人はやっぱりすごいとも思いました。

 でも実は、彼ら自身も自分のすごさをわかってないんだと考えたんですよ。すごく新しい世界が見えているのかもしれないけれど、うまく伝えられていなかったりね。

佐渡島 そうですね。クリエイターは作品という形でしか伝えられなくて、他で伝える方法を持っていない。

森岡 そうなんですよ。また、伝えられている部分は、彼らの世界の一部でしかないんですよね。

佐渡島 はい、実にもったいない。

森岡 だから、翻訳可能なのは、彼らの持っている頭の一部なんですよね。

佐渡島 そうですね。

森岡 クリエイターの特殊な脳はすごいですよね。人間ってすごい。面白い。で、そういうものを私たちは引っ張り出すわけです。世の中的な刺激を、うまい具合で作家のモチベーションに響くような、クリエイターのモチベーションに響くような形でフィードバックできれば、もっといいものが出せるのかもしれないですね。たとえば「この部分を引っ張り出すより、この部分を引っ張り出したほうがより多くの人が感動するかもしれない」というのが、私たちにはわかるわけですよ。

佐渡島 そうですね。

森岡 どうすればもっとクリエイターの世界がわかるんでしょうね。私よりも、佐渡島さんのほうが深くこの世界を見ようとされてきたと思うんです。ぜひ、見えてきたら教えてください(笑)。

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佐渡島庸平 [株式会社コルク代表取締役]

1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦「バガボンド」、安野モヨコ「さくらん」のサブ担当を務める。03年に立ち上げた三田紀房「ドラゴン桜」は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1600万部超のメガヒットに育て上げ、TVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎「モダンタイムス」、平野啓一郎「空白を満たしなさい」など小説連載も担当。12年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。


ぼくらの仮説が世界をつくる

1600万部超 『宇宙兄弟』、600万部超 『ドラゴン桜』を大ヒットに育て上げた編集者であり、作家エージェント会社「コルク」を起業した、 いま注目度ナンバーワンの編集者・経営者が仕事論を初めて語る!

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