年末のこの時期にメディアの定番ネタと言えば「今年の重大ニュース」(10大ニュース)。そして来年の大予測。というわけで、当連載でも今年を振り返りつつ、来年の社会貢献の動向を考えてみたい。筆者の独断と偏見で選び、順位をつけているので異論・反論もあるかと思うが、細かいことは気にせずご笑覧いただきたい。
初めて明らかになった
日本の寄付市場の規模
1位は、「日本初の寄付白書の発行」。
昨日(12月20日)に、日本ファンドレイジング協会から発行されたが、これがなぜ1位なのかというと、この白書によって初めて、日本の寄付市場の全体像が見えたからだ。どのようなビジネスでも、市場の把握は基本中の基本。しかし、日本のソーシャル・ビジネス業界では、その中核となる寄付市場すらハッキリと把握できていなかった。NPOも、市場の全体像がまったく分からないままソーシャル・ビジネス、ファンドレイジングを行なっていたわけだ。これでは市場を、まともに活性化できるわけがない。
そんな状況を打破すべく、日本ファンドレイジング協会が大規模な調査を実施。全国の20~69歳の男女を対象に、インターネット調査。標本数約1万4000、うち有効回答数約5000。回収率は約38%である(実施時期は2010年3月)。これまで、日本の寄付市場は概ね2000億円から3000億円くらいと言われていた。ところが今回の調査で明らかになった日本の寄附市場は1兆円である!
同白書によれば、個人寄付が約5500億円。法人寄付が約5000億円。合計で約1兆円となる。ちなみにアメリカの個人寄附は約2300億ドル(約18兆円)、イギリスは99億ポンド(約1兆3000億円)である。
1兆円という市場はどの程度のものか。まず居酒屋業界。大手チェーンから個人経営店まで、全国いたるところに居酒屋があるが、この業界がざっと1兆円である。SuicaやEdyなど、電子マネー業界も2008年にようやく1兆円を突破したらしい。なにかと派手に見える音楽業界では、音楽ソフト(CDやDVDなど)の生産金額は2009年で約3100億円。ミリオン・セラーを連発した1998年でも約6000億円である(日本レコード協会資料による)。
これらと比較して考えると、寄附市場1兆円というのはけっして小さくはない。これだけの規模の市場があるわけだから、自立可能なソーシャル・ビジネスがいくらでも構築できるはずである。単純にはたとえられないが、街で見かける居酒屋の数だけ、自立可能なNPOがあってもおかしくないという理屈だ。社会セクターも今まで以上に奮起することだろう。
ちなみに、2009年に寄附を行なった人の平均寄付額は年間約1万4000円。この数字が明らかになっただけでも、寄附集めのプランニングには大いに役立つはずだ。ファンドレイジングの可能性を大きく広げたという意味から、同白書の発行を第1位とした。この「寄付白書2010」は日本ファンドレイジング協会のウェブサイトから購入可能だ。