25日、今年の大型IPO(新規株式公開)案件として注目されるJR九州が上場する。国鉄の分割民営化で発足してから約30年。JR北海道、JR四国とともにドル箱路線がなく、「上場は難しい」と言われたが、不動産など「鉄道以外」の事業で活路を見出した形だ。
「上場は無理」を覆した
3つの要因とは?
「LINEに次ぐ大型IPO」として注目を浴びたJR九州上場。九州全域に線路網を持ち、売上高は3779億円(2016年3月期)。知らない人はほぼいないほどの知名度の高さもあって、多くの投資家たちの関心が集まった。
しかし、そんな有名企業でも、上場への道は平坦ではなかった。
「大都市圏を除いてローカル線は赤字。新幹線で稼ぐしかない」と言われてきたJR各社の経営。1987年のJR発足後、90年代にJR東日本、JR西日本、JR東海が相次いで上場したが、「3島会社」(JR北海道、JR四国、JR九州を指す)と、貨物会社・JR貨物の計4社は「上場は難しい」と考えられてきた。
不利な条件を覆すことができた要因は、九州新幹線の開業効果と不動産事業の拡大、そして、いわば「国のおカネでリストラができた」格好となった経営安定化基金の取り崩しの3点だ。
ほかの「3島会社」メンバーと同じくJR九州も民営化以降、鉄道事業の営業損益は赤字続き。鉄道事業を含む運輸サービス事業では16年3月期も105億円の営業赤字だった。業績を支えているのは、むしろ建設事業や駅ビル・不動産事業、流通・外食事業である。この3つの事業で合計299億円の営業利益を稼いでいる。
11年3月に博多~新八代間が開業し、04年に先行開通した新八代~鹿児島中央間と合わせて全線開通となった九州新幹線鹿児島ルートは、これらの「鉄道以外」の収益アップにも大きく貢献した。開業に合わせてオープンした博多駅前ビル「JR博多シティ」は、北九州市など周辺地域のお客をも吸い寄せる力を持っている。
「運賃だけでなく、駅ビルやホテルはもちろん、テナントに入ったコンビニやパン屋に至るまで、新幹線が開通すると人の往来が増える分、さまざまな収入増が期待できる」。あるJR関係者が話すように、新幹線開通はこうした周辺事業への波及効果が非常に大きい。