かつては一家の大黒柱である男性が亡くなったときに備えて、保障額が大きい死亡保険に入るというのが定番だった生命保険。未婚率の上昇や女性の社会進出などにより、女性が今後のメーンターゲットとなるかもしれない。
生命保険文化センターが行った調査によると、2010年の生命保険の加入率は男性が79.9%(前回2007年調査比で2.0ポイント減少)だったのに対し、女性が81.4%(同0.2ポイント上昇)となり、調査開始の1987年以来、初めて逆転した。ちなみに1987年の調査では男性84.9%、女性71.2%であり、女性の上昇率が高いことがみてとれる。
「20歳代の男性の未婚率は80%と上昇しており、保険加入への必要性を感じない層が増加しているようだ。一方で、医療保険に加入する女性が増えていることが、女性の加入率を引き上げているのでは」と生命保険文化センターは分析している。
こうした背景には、女性の社会進出があるとみられる。晩婚化が進んで独身女性も増えており、万が一、病気になったときに備えて医療保険に入りたいという女性が増えているのだ。また60歳代の女性の加入率も大きく男性を上回っており、夫が亡くなった後を含めた老後の医療費を心配して、加入が進んでいる様子も伺える。
こうした現象を後押ししてきたのが生命保険各社。女性向け医療保険の販売にはかなり力を入れていたからだ。
女性向け医療保険「CURE Lady」を販売するオリックス生命保険によると、08年度は月間約4400件の販売に対して、今年度は月間6000件強ペースと順調に成績を伸ばしている。
中でも女性特有の病気に焦点を当てた保険は人気が高い。オリックス生命では、「乳がん、子宮がんに対する予防の啓蒙活動が活発化したことで、備えたいという女性が増加したようだ」とみている。
これに対しアクサ生命保険は女性をメーンターゲットとして、ガンと診断された場合に収入保障年金が支払われる保険を投入。首都圏限定で女性向けコンサルティングサービスまで開始するなど、男性の加入率の上昇余地が小さい中で、女性の囲い込みに必至だ。
ただ女性向け商品の中には、保険料が割高で悪名高き保険もある。健康だった人に数万円程度のお金を払い戻す「お祝い金付き保険」は、お祝い金分として保険会社に支払った保険料よりも、最終的に受け取るお祝い金が少ないという摩訶不思議な商品もあり、契約者をないがしろにしている。また公的な健康保険の高額医療費控除制度など、手厚い支援措置の存在を知らずに民間の生命保険に加入する人も少なからずいる。保険加入時は無駄な保険に入らないよう、複数の保険担当者や代理店に相談するのがいいだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)