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ヒット商品開発の舞台裏

キリン「生茶」が販売終了寸前から再ヒットした理由

夏目幸明 [ジャーナリスト]
【第17回】 2016年10月27日
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2014年頃、キリンビバレッジの『生茶』ブランドは存亡の危機にあった。00年に発売してから5年間は、緑茶市場の拡大とともに販売数も右肩上がり。しかし競合の躍進もあり、売上は最盛期の半分にまで落ちていたのだ。ここで、マーケティング担当者が考えた「秘策」とは?(ジャーナリスト 夏目幸明)

シェア20%の大ヒット商品だったが
発売5年後には飽きられた

 ブランドは、企業の「資産」だ。トヨタ、ベンツ、資生堂などは、社名を聞くだけで企業姿勢や、商品の強み、クオリティが思い浮かぶ。この状況になるまで、上記の企業はどれだけの実績をあげ、広告費を使っただろう?

売上げは最盛期の半分、存亡の危機にあったキリン『生茶』は、今年春のリニューアルで見事再生を果たした。商品開発担当の菅谷恵子氏が語る「お客に飽きられたブランド」復活の道程とは?

 もちろん、商品も同じだ。

 キリンの『生茶』ブランドは2000年に誕生した。CMに女優の松嶋菜々子さんを起用し、お茶カテゴリーのシェアトップだった伊藤園『おーいお茶』を猛追した。現在『生茶』ブランドを担当する菅谷恵子氏が「当時の担当者から聞いた話ですが」と誕生秘話を明かす。

 「生チョコレート、生ビールなど、日本人は『生』という言葉にいいイメージを持っています。そこで『お茶にも生があればどうだろう?』と考えたのがブランド名の由来です」

 このコンセプトに基づき、キリンビバレッジは緑茶の研究を重ねた。お茶を高温で淹れると、カテキンという苦みの成分が出る。一方、低温の場合、カテキンの溶出が抑えられ、テアニンをはじめとするアミノ酸の味――すなわち旨みや甘みが際立った味になる。

 そこで、キリンは最適な温度を59度と定め、お茶を抽出した。また抽出の工程で、乾燥させたり、火を通したりする前の「生茶葉」を使い、少し青々しい香りを加えた。その後、「生」という言葉が受け入れられ、同時に「甘い/旨みがある」という特徴も認知されて、『生茶』はカテゴリシェア20%を超える商品にまで成長した。

 しかし、ブランド力は必ず衰退していく。例えばiPhoneが登場したばかりの頃は、持っていると「洗練された人」「新しい物が好きな人」というオーラをまとえたものだ。だが、あまり斬新さを感じさせない進化が続けば、すぐ「日用品」になってしまう。『生茶』も同じだった。

 「2005年をピークに売上は微減を続けました。次第に『薄い』という評価が目立つようになり、飲むシーンを調べても『喉の渇きを癒やす』という回答が増え、『緑茶の味を楽しむ』といった評価は減っていったんです」

 お茶を選ぶ時「どうしても『生茶』がいい」という強いモチベーションを持ってもらえなくなっていたのだ。要するに、飽きられてきたということだ。

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夏目幸明[ジャーナリスト]

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店に入社。その後、雑誌記者に。小学館「DIME」の『ヒット商品開発秘話 UN.DON.COM』や講談社「週刊現代」の『社長の風景』などを連載中。著書に『大停電(ブラックアウト)を回避せよ!』(PHP研究所)などがある。


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