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ヒット商品開発の舞台裏

“奇跡の冷凍うどん”が中身を変えずに売上100倍にできた理由

経済ジャーナリスト・夏目幸明
2016年5月25日
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新たなタイプの『袋麺』がヒットしている。冷凍麺の老舗・キンレイの冷凍うどん、ラーメンだ。鍋で加熱すればすぐ食べられ、具入り、ストレートスープだから味もいい。だがこの商品、発売後は鳴かず飛ばず、社内で「こんなものやめちまえ」とさえ言われる商品だった。この時、営業やマーケティングの担当者がとった「最後の一手」とは――。

マーケティングは完璧!
なのに販売は「惨敗」

 アルミ製の鍋型容器に入った冷凍麺は、もう40年以上売れ続けているベストセラー商品だ。販売元は「キンレイ」。実はコンビニのプライベートブランド商品も、製造元は同社。この分野ではオンリーワンの存在なのだ。同社でマーケティングを担当する福田暢雄氏が話す。

「お水がいらない」の一言が起爆剤となって、売上が100倍に伸びたキンレイの袋入り冷凍うどん。意外な工夫がヒットの起爆剤となる

 「アルミ容器入りの冷凍麺には、数多くのメリットがあります。まず、スープにこだわれます。スープを濃縮する場合、熱を加えるため香りが飛んでしまうのです。しかし冷凍麺は工場内でつくったスープをそのまま冷凍し、店頭に届けるため、味が落ちないのです。また、急速冷凍技術を磨き続けてきたため、麺もゆでたてをギュッと凍らせており、食感がいい」

 流通時も保管時もずっと低温を保つ必要があるためコストはかかるが、ユーザーが享受するメリットも大きい。これにより、キンレイはストレートスープの冷凍うどん等を年間約2000万食も出荷する企業に成長した。

 キンレイが期待の新商品を発表したのは2005年のことだった。きっかけは、お客から寄せられる声だった。

 「お客様から『アルミ製の容器に入っていなくてもいい』といった声をいただく機会が増えたのです。そこで、アルミ容器の中身――うどんとスープと具だけを袋に入れ、『料亭の匠』という名で販売しました」(福田氏)

 マーケティングは完璧だった。アルミの使い捨て容器にはどうしても「エコでない」イメージがあったが、これをなくせたのは大きい。また、共働きの夫婦が増え、凝った食事をつくる時間がない家族が増えていた。ただし主婦の多くは「買ってきたお総菜をそのまま並べるのは、家族に申し訳ない」という思いを抱えているものだ。

 「その点、袋に入っていれば野菜を入れるなどアレンジもしやすい。価格は、具材たっぷりで500円でした。商品をリリースした時、社内には『この自信作が売れないはずがない!』という雰囲気があったと思います」(福田氏)

 ところが、蓋を開けてみれば商品は惨敗を喫した。なんと、年間1万食程度しか流通しなかったのだ。

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