天才サルバドール・ダリの長寿を支えたオリーブ油イラスト/びごーじょうじ

 シュールレアリスムを代表する画家、サルバドール・ダリ。若き頃から数々の作品を世に送り出し、絵画や彫刻作品だけではなくルイス・ブニュエルと制作した映画『アンダルシアの犬』からおなじみのお菓子「チュッパチャプス」のロゴデザインまで、その才能は多岐にわたる。才能ある人物は早世するとよく言われるが、自らを“天才”と表現してはばからなかった彼は意外にも(?)長寿者だった。

「六歳のとき、私はコックになりたかった」

 自伝『わが秘められた生涯』はそんな書き出しからもはじまる。このことからもわかるように、ダリは食に強い関心を持っており、ついには料理本『ガラの晩餐』まで出版している。

 好物は甲殻類やウニ、カタツムリ、卵といった固い殻を持つもの、反対に軟らかく形がない食べ物、例えばホウレン草は嫌いだと公言していた。

 しかし、好き嫌いは自己演出の一環ではないか。昼食のカマンベールチーズが溶けている場面から発想した傑作『記憶の固執』や自伝の中に「玉ねぎつきの兎肉をくれたまえ──暖めなおしたやつだ!」と言うシーンがあるように(玉ネギはもちろん軟らかい)この好き嫌いには疑問が残る。ダリは甲殻類のよろいのように自己をプロデュースすることで、自らの価値を高めていたので、好き嫌いも自己演出の一環だろう。