よくある光景~余計な話が多すぎて
佐竹興産・合同面接。入社7年目の鉄鋼営業部所属である、私、柳田醍醐は面接担当に駆り出された。ま、3年前にもやったことがあるのでどうにかなるだろう。
「はい、それでは次の方、自己紹介を」
「はい、秋田大経済学部3年の井川さくらです。本日はよろしくお願いします。私は学生時代に八郎潟の農業ボランティアを3年間やっていまして…」
おいおい、そこで全部話しちゃうの?
「あー、君。君ね。とりあえず、簡単な自己紹介だけでいいかな?」
「はい、すみません…」
どうも、このグループは井川に引っかき回されそうだ。こういう学生、なんだっけ、メガンテ?クラッシャー?
「はい、では次に自己PRをお願いします」
ここでも他の学生が普通に話せるのに、井川はクラッシャーぶりを発揮してくれた。
「私は学生時代に八郎潟の農業ボランティアを3年間やっていました。そもそも八郎潟とは日本で2番目に大きい湖でした。1957年からはじまった干拓事業により…」
おい、ここは日本農業史の授業じゃないんだぞ。農業でもバイトでもなんでもいいから自分の話をもっと簡単にしてくれよ。ふと時計を見ると7分も話をしていやがった。面接の予定時間内に人事に言われた質問項目、消化できそうにないな、こりゃ…。
「はい、それでは次の質問です。あなたが弊社に入社してやってみたいビジネスはどんなことでしょうか?なお予定も迫っているので簡潔にお答えください」
どう考えても、井川向けに言っているのだがこのバカ女め、そっぽ向いていやがる。
「私が貴社に入りましたら…」
貴社は文書で、口頭では御社だろ。だんだんイライラどころでない、ムカッと来た。井川の話が耳に入るどころではない。
「はい、次」
「はい。私は御社に入りましたらリサイクル事業を手掛けてみたいと思います。特に家電廃品のリサイクルをもっと効率化すれば大きな収益が見込めます。理由は他にいくつかあるのですが、簡潔にということでしたのでここまでにしたいと思います」
ん?30秒もしていないぞ、なんだこの場の空気が読める学生は。名前をもう一度見ると、岩城みなと。秋田大経済学部か、同じ大学なのになんでこんなに違うのだろう?評価シートには井川を×、岩城に◎と書いたのは言うまでもない。
※ここまでの部分はフィクションです