「私って、何のアピールポイントもないんですが、
どーすればいいですか??」

 ちょっと前にあったポワンとした女子学生からの相談。

「そんなの知らねーよ」
 「そうですよねえー。そんなの分かっているんですけどー。でも、どうすればいいんですかねえ…。だって、私、今まで特にこれといって何もやってこなかったんですよー」

 多くの学生のセルフイメージはこんな感じだ。学生の中には「就活で成功する学生像」が勝手に存在する。それは典型的には、「超アクティブ」、「課外活動をバンバンやっている」、「サークルの代表やゼミの幹事長」、「体育会系」などだ。しかし、大多数の学生は代表でも幹事長でも体育会系でもない。すると、このポワンちゃんと同じような状況に陥る。

 何のアピールポイントもないと言うポワンちゃん。しかし、彼女は実は私が大学に赴任後初めて研究室を訪問してきた学生であった。今でこそいろんな学生が研究室にやってくるが、最初は非常にハードルが高く勇気がいったはずである。まだ4月で何回か授業をやっただけだったので、一人でやって来たわけではなくほかの女子2名と一緒だったが、その日は彼女たちの行動力に素直に驚いた。

 授業が半ばに差し掛かった5月か6月のある日のこと。「ここは分かって欲しい」という内容を説明し終えて、教室を見渡すと不安な顔のポワンちゃんを見つけた。

「どう? 分かった? 顔に分かりませんって書いてあるけど?」
 「はい、分かりません」
 「どこが分かりにくかったかな?」
 「うーん…(沈黙)」
 「どこが分からないか、分からない感じ?」
 「はい、ここまでは何となくついて行けたんですけど(と言ってレジュメを指差す)、この後は何が分からないかも分からなくなりました

「分からない」と「分かろうとしない」は大いに違う。多くの学生は分かろうとしない。しかし、彼女は分かろうとして分からなかったのだ。それでも、授業で「分からない」と発言することは勇気がいる。恥ずかしいし、講義を聞いていなかったと誤解される恐れもある。

  したがって、多くの学生は何となく分かったフリをする。しかし、それでは誰にとってもメリットはない。このときは、ポワンちゃんが「分からない」と言ったことにより、私は別のアングルからもう一度説明をすることになったが、それで彼女や周りの学生も理解が進んだようだが、実は一番救われたのは教員、つまり私であった。「なるほど、こういうふうに説明をしたほうが分かってくれるんだ」という発見をもたらしてくれた。