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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

なぜTPPが挫折すると日本は大ピンチなのか

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
【第221回】 2016年11月16日
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トランプ次期大統領が決まり
TPPは挫折?

1929年のウォール街の株価暴落後、世界経済は恐慌に向かったが、その傷口を広げたのは保護主義政策でした

 米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が決まり、日本経済の未来に暗雲がたちこめている。目先の株価が上がり、円安が進んだくらいで楽観してはいけない。万一、米国が保護主義の方向に舵を切っていくことがあれば、2020年にかけて日本経済が成長率を高めていく道筋を描くことが極めて困難になる。

 目下の焦点は、TPPの行方である。少なくとも年内は米議会でのTPPの承認を見送ることを決めた。トランプ氏が大統領に就任すると同時に停止されるリストにTPPは入っている。

 安倍首相がAPEC首脳会議前の17日にトランプ氏と会談予定だが、その際にTPPの継続について、トランプ氏に要請があるだろう。TPPにはメキシコも入っているので、トランプ氏に強い警戒感を抱いている周辺国からも幾度も働きかけが行われるとみて間違いない。ただ、大方の見方は、TPPが挫折の危機に瀕しているというものだ。

 なぜ、日本にとってTPPが大きな恩恵をもたらすかといえば、成長率を押し上げる効果があるからだ。

 例えば、日本の成長率が実質1%で、米国が2%、欧州が1.55%だったとする。いずれの国も日本の成長スピードよりも速い。ならば米国に輸出をするとその取引数量は、米国のスピードで拡大し、日本国内の販売数量よりも高い成長率が期待できる。

 人口減少によって内需の成長率が落ちるとすれば、内需向けから輸出向けに生産物の販売をシフトすることで、企業は人口減少の引力に縛られずに業績を向上させることができる。貿易拡大こそ、最大の人口減少対策といえるのだ。

TPPは相乗効果
米国抜きでは厳しい

 人によっては米国抜きでもTPPが発効できるように見直しを行ったり、他の貿易連携を拡げる道があると考える。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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