経営×総務
経営総務研究所
【第3回】 2016年12月8日
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ダイヤモンド・オンライン編集部

グローバル企業の総務と日本企業の総務はこんなに違う!

金英範さんは、モルガンスタンレー、メリルリンチなどの外資系金融機関の総務で20年以上のキャリアを積んできた「総務のプロ」。その後コンサルタントや総務FMアウトソーシング事業部統括の実績を経て、現在は社内組織のグローバル化が進む日産自動車のコーポレートサービス統括部(いわゆる総務)でグローバルを統括する主管を務めている。その金さんにグローバル企業の総務と日本企業の総務の違い、さらに、日本の総務ではまだ馴染みはないものの、グローバル総務では経営に直接関わる大きな役割となっている「ファシリティマネジメント」について、詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン事業部部長 田村淳一)

金英範/日産自動車コーポレートサービス統括部主管。一級建築士、MCR(不動産管理資格)、CFM(ファシリティマネジメント資格)。早稲田大学建築学科卒。オフィス設計事務所での勤務経験を経て、米大学院へFM修士留学。帰国後、外資系証券会社を中心にいくつかの企業の総務、FMをインハウスで実践。またコンサルティング、アウトソーシング事業などサプライヤーとしての経験も豊富。2016年4月より現職。

従業員を「ユーザー」と呼ぶグローバル総務

――日本の総務はとかく「社内の縁の下の力持ち」的な存在で捉えられがちですが、この「経営×総務」では、経営が総務などのバックオフィス部門にもっと意識を向けて積極的に強くしていくことが重要ではないかと考えているんです。

 グローバル企業の総務は役割に「ファシリティマネジメント」があって、それが経営の柱の1つとなっていると聞きます。日本の総務と経営を考えていくときにそこは結構ポイントになると思うのですが、そもそも日本では「ファシリティマネジメント」自体、馴染みがない言葉なんですね。ファシリティマネジメントとは何か? ということも含めて、まずグローバル企業の総務と日本企業の総務の違いから教えていただけますか?

 そこはなかなかわかりにくいところですよね。グローバル企業では、総務を「コーポレートサービス」や「ジェネラルサービス」と呼ぶところが多いですね。日本の外資系企業もだいたい8割くらいはそういう名称だと思います。弊社の総務も「コーポレートサービス統括部」です。

 コーポレートサービスは、ユーザーに対するサービスや支援をする部署です。日本の総務部は人事的なことや渉外的なこと、広報の役割まで入っている場合もありますから、日本の総務のほうが関わる範囲が広いと思います。

――社内の従業員を「ユーザー」と呼ぶんですね。

 はい。営業などのフロント部門にとって、自分たちの商品やサービスを売り込むユーザーは外部のお客さんだと思いますが、我々にとって、サービスのユーザーは施設を利用する人全員ですから、従業員に加え、常駐する契約企業や契約社員も含まれます。そのユーザーのビジネスニーズに適したサービスをいかに敏速に提供できるか、ということを常に考えています。そういう意味で我々にとっての“成果測定”の肝は、経営陣も含めユーザーがどれだけ満足してくれるかということになります。

――そのスタンスがすでに、日本の総務部とは違う気がします。

 日産のようなグローバル企業はある程度そのカルチャーは存在し、サービス精神あふれた総務スタッフもいますが、日本企業全般のイメージでよく総務仲間から聞く話では、昔ドラマにあったあの脚立を持って歩いている「ショムニ」のような雑用係的なイメージで捉えらている企業も多いです。もちろん、コーポレートサービスにもショムニ的な役割を担う部分はありますが、もっと「社内に向けてプロのサービスを提供する」という役割への意識が強いと思います。

――「プロ」と表現されましたが、実際の業務内容もずいぶん違いますか?

 コーポレートサービスの中身は簡単に言うと大きく2つ、ハード系とソフト系があります。

このハード系というのが不動産も含めたファシリティです。ファシリティマネジメントと言われるゆえんがここにあります。ここは経営と直結する部分ですし、預かる金額も大きくなります。例えば本社を建てるなら、立地条件から広さ、オフィスの大きさ、規模を戦略的に考え、賃貸なら賃貸ビル探し、物件の賃料交渉。そういう不動産的な業務からスタートして、それが決まったらオフィス作りをします。

 日本企業でオフィス作りという場合、もともとある建物の部屋の中に、どんな什器をどんな風に入れてレイアウトするか、くらいが一般的だと思いますが、ファシリティマネジメントは、ゼロから考えるんです。何もない状態から、戦略的にオフィスを作り込むという感じですね。

 また、オフィスそのものだけではなく、データセンターや重要機器設備、IT設備、発電機、無停電電源装置など「オフィスを止めないための仕組みづくり」ということも手掛けます。作った後のメンテナンスも仕事です。だからファシリティマネジャーは、建築、設備、電気機器などの専門知識がある程度は必要になります。

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「総務部」を単なる社内の何でも屋的役割ではなく、社内リソースを統轄する戦略部署とすることで会社は変わる――。COO、CFOと並ぶ「CHRO」が誕生している人事部と同様、総務にもCクラスを誕生させることが求められるのではないか。総務を、経営会議に参加する、経営戦略の一端を担う「戦略総務」化することで企業がどのように変わるか、経営に資する総務の在り方を探る。

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