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法人減税で利益消失の危機
思わぬ余波に身構える金融界

週刊ダイヤモンド編集部
2011年1月24日
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2011年度税制改正大綱を受け取る菅直人首相(右)。今国会での成立を目指すが、法人減税に関しては困難が予想される。
Photo:JIJI

 企業の海外流出を防ごうと、菅直人首相が12月に打ち出した法人減税が、金融機関に思わぬ影響を与えかねず、波紋を広げている。

 政府は2011年度税制改正大綱で、法人にかかる実効税率を約40%から35%程度に引き下げることを決め、今国会での成立を目指している。ところが、当初これが金融機関にとっては逆効果となりそう。一時的に最終利益が押し下げられる可能性が高いというのだ。

 その原因は繰延税金資産(繰税)。金融機関がバブル崩壊後に不良債権の処理を進めた結果、大量に抱えることになった、“税金の前払い分”とも呼ばれるものだ。

 これは納税のための税務会計と、企業活動の実態を表す企業会計、二つの会計制度が税金の支払いを認識する際の、一時的な時間差の調整に使われる。

 金融機関が不良債権を処理する際、先に企業会計上の費用を計上し、その後に税務上の損金として処理する。この間、金融機関は実際の利益よりも課税所得が多い状態になる。

 その差に実効税率を乗じて回収可能性を判断したうえで、繰税とする。企業会計上は、その額で法人税を控除し、税金の支払いが実態に近づくよう調整しているのだ。

 そのため実効税率が引き下げられ将来の納税額が減れば、“前払い分”を多めに計上していることになる。つまり35%の実効税率で繰税を計算し直すと、法人税の控除が少なくなってしまい、結果として最終利益が減るというわけだ。

 昨年末、地方銀行の経理担当者の会合で、ある銀行が地銀63行の影響度を試算した結果を披露した。

 1行当たり平均で最終利益が27億円も押し下げられ、「中間利益が消し飛ぶ銀行がいくつもあった」(地銀幹部)というから、関係者が驚くのも無理はない。

 そこで本誌でも、法人減税が実現、今年度の通期決算から新しい税率が繰税の計算に適用されると仮定して、公開情報を基に第二地銀を含む地銀界の影響度を試算してみた(繰税は10年9月期の純額を使用)。

 その結果、10年度最終利益(会社予想)の約2.5倍もの金額が吹き飛ぶ関西アーバン銀行をはじめ、東北銀行も約1.3倍のマイナスの影響が出るなど、なにも穴埋めをしなければ最終赤字に陥ってしまう銀行は、5行を数えた。地銀全体で見れば、1500億円もの金額が最終利益から消し飛ぶ計算になる。

 こうした影響は一時的なもので、将来的に法人減税は当然プラスに働く。また、会計上の数字の変化であって、手元の現金が消えるわけでもない。

 とはいえ、そもそも「最終利益の確保を繰税に頼っている金融機関は異常」(金融庁幹部)。法人減税が正式に決まれば、いまだにいびつさが残る金融機関を正常な状態に戻す、よいきっかけになるかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

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