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吉田恒のデータが語る為替の法則

米国より欧州が先に利上げするとの見方は疑問。
ユーロ逆襲には自ずと限界がある!

吉田 恒
【第115回】 2011年1月26日
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 ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁が1月13日(木)に、インフレを警戒する発言を行いました。これをきっかけにしてドイツの金利が急上昇し、ユーロも急反騰しています。

 これは金融市場の中に、FRB(米連邦準備制度理事会)よりもECBのほうが利上げへの転換が早く、年内にも利上げするかもしれないといった見方が増えてきたためではないかと思っています。

 ただ、実際にそうなるのか、つまり、FRBよりECBの利上げが早いかと言えば、個人的には疑問に思っています。

 ですから、さらなる「ユーロ買い・米ドル売り」には自ずと限界があると思っています。

原油価格上昇でユーロ圏にインフレ懸念がでてきた

 それでも、トリシェ発言で、金融市場がECB早期利上げへの警戒を強めたことは理解できます。

 この動きのキーワードは「原油」でしょう。WTI原油価格(NY原油)は最近、100ドルの大台に近づく動きとなっています。

 ECBはかつて、原油価格が150ドルに向かった際に、リーマン・ショックの2カ月前というタイミングでも利上げに踏み切った中央銀行です。そのようなECBですから、財政危機が続く中でもインフレ懸念から利上げを行う可能性があることを、マーケットは思い出したということでしょう。

資料1

 景気に多少の不安があっても、インフレ懸念があるなら強い姿勢で臨む「インフレファイター」として、ECBは一般的に理解されています。

 それは、ECBで中核的な役割を担っているドイツ連銀、いわゆる「BUBA」の流れを汲んでいるためで、この「BUBA」こそが、世界最強の「インフレファイター」なのです。

ECBの利上げ見通しが早まってきた

 2度の世界大戦で敗戦国となったドイツは、戦後、ハイパーインフレに苦しみます。そのような苦い記憶から、「BUBA」はインフレに対して最も強い姿勢で臨む中央銀行と呼ばれているのです。

 「BUBA」は最強の「インフレファイター」であり、その精神はECBにも受け継がれています。

 ただ、そのようなECBでも、昨年から急拡大している財政危機の中では利上げへの転換は2011年中は無理で、早くても2012年半ば頃との見方がこれまでは一般的だったようです。

 しかし、「インフレファイター」であるECBが中央銀行であること、原油価格が100ドルに迫るなどインフレ懸念が浮上していることを併せて考え、マーケットでは利上げ見通しを年内へと早める見方が広がってきたようです。

これまで、ECBはつねにFRBを後追いしてきた

 このようなことを受けて、場合によってはECBがFRBよりも早く利上げに動くかもしれないとの見方が広がり、「ユーロ買い・米ドル売り」が急拡大してきたということだと思います。

 ただ、実際にECBがFRBよりも早く利上げするかとなると、私はちょっと疑問です。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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