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医療・介護 大転換

日本でタブー視される「死のあり方」

映画「92歳のパリジェンヌ」から紐解く「安楽死」

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第66回】 2016年11月23日
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「安楽死」に触れた映画が増えている

安楽死を扱った映画が増えていますが、海外と比べた日本の「死」のあり様とはどんなものでしょうか

 「もう疲れたの」「気力がなくなって」「この世を去りたい」――。そんな言葉を家族に投げかけて、安楽死を選んだ老婦人。その老婦人の心の中に分け入り、忠実にたどった映画に感銘を受けた。

 上映中のフランス映画「92歳のパリジェンヌ」である。原題の「La Derniere Lecon」(最期の教え)が内容をよく表している。

 安楽死に触れた映画が最近増えているが、これほど安楽死そのものをテーマに、人生の終止符の打ち方を考えさせる映画はなかったように思える。

 自分で自分の死を決める安楽死は、がん末期など致命的な病が原因で選択されると言われる。だが、この映画の主人公の老婦人は、加齢に伴う心身の不調を不快と感じているに過ぎない。日常生活の細かいことが少しずつ、1人ではできなくなる。

 車の運転、丁寧な調理、整理整頓などだ。便座から立ち上がれなくなって、その間にオーブンから出た煙が部屋中に広がってしまったことも。92歳だから不思議なことではない。決定的だったのは、おねしょである。自宅に続いて入院中にも漏らしたため、すぐに看護師から紙おむつを着けられてしまう。

 以前から唱えていた安楽死を決行する気持ちが一段と高まる。本人の気持ちを知った息子と娘、孫の葛藤が巧みに描かれる。「老人特有の鬱病だから」と母親の決意を受け止められない息子。初めは反対したが、次第に母親の気持ちを理解していく娘。

 皆が人間の死に向き合う。映画は、終わりまで余計なエピソードなどは一切入らない。安楽死を選んだ当事者と家族の心だけを真正面からとらえ、正攻法でカメラが回る。

 自身の意思で、自身の人生の幕を閉じることが極めて自然な行ないであることがよく分かる。この老婦人にはモデルがいた。1997年から5年間、ミッテラン大統領の下でフランスの首相を務めたリオネル・ジョスパンの母である。作家の娘が綴った小説が原案となり映画は製作された。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


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2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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